全 情 報

ID番号 09231
事件名 割増賃金支払請求控訴事件
いわゆる事件名 シンワ運輸東京(運行時間外手当・第1)事件
争点 割増賃金の代わりに支払われる歩合給的な手当について労基法37条違反が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) Y(被告、被控訴人)に雇用され、大型貨物自動車による配送業務に従事していたX(原告、控訴人)らが、Yに対し、労働基準法37条による割増賃金、同法114条による付加金及びそれらに関する遅延損害金の支払を求める事案である。Yの賃金規程では、基本給や各種手当のほかに配送する荷物の受託先から得られる運賃収入に一定の割合を乗じて算出される「運行時間外手当」を支給するものとしているところ、Xらは、上記運行時間外手当は実質的な歩合給であって、労働基準法37条所定の割増賃金が支給されたことにはならないと主張するのに対し、Yは、これは割増賃金の性質を有しており、割増賃金を支給しているものであると主張する。
(2)東京地裁は、運行時間外手当は労働基準法37条所定の割増賃金であり、そうするとYらの主張する割増賃金の未払いは認められないとして、Xらの請求をいずれも棄却したため、Xらがこれを不服として控訴した。
参照法条 労働基準法37条
体系項目 賃金(民事)/割増賃金/(3) 割増賃金の算定方法
裁判年月日 2018年5月9日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成30年(ネ)25号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1191号52頁
労働経済判例速報2350号30頁
審級関係 確定
評釈論文
判決理由 〔賃金(民事)/割増賃金/(3) 割増賃金の算定方法〕
 「労働基準法37条は、使用者に対し、同条所定の方法によって算出された額を下回らない割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるものと解されるところ、本件賃金規程12条ないし14条を全体としてみれば、Yにおいては、〈1〉従業員の時間外手当…について、それぞれの基準内賃金の合計額を基礎賃金として労働基準法37条所定の計算方法に沿って算出された割増賃金を支給するものとし」、「他方、〈2〉別途乗務員(運転手)については、運賃収入を基礎として計算した運行時間外手当の全額を上記時間外手当相当額すなわち割増賃金として支給することとし」、「〈3〉運行時間外手当の支給額が上記〈1〉の算定をした時間外手当(割増賃金)の金額に不足する場合には、その差額を支給することとし」、「〈4〉運行時間外手当の額が〈1〉の時間外手当(割増賃金)を超える場合であっても、その差額は運転手に取得させることとしていたものである。かかる割増賃金の算定及び支給方法によれば、運行時間外手当の額は労働基準法37条所定の計算方法によって算出される額を下回らないこととなり、同条に反する点は認められない」。