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ID番号 09236
事件名 未払給与請求控訴事件
いわゆる事件名 NHK(名古屋放送局)事件
争点 休職期間中テスト出局を経て解職された労働者による地位確認などが問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) Y(被告、被控訴人)の従業員(職員)であったX(原告、控訴人)が、精神的領域における疾病による傷病休職の期間が満了したことにより解職となったところ、(1)休職期間満了前に治癒し、Yとの間の労働契約が存続していると主張して、〈1〉労働契約上の地位確認、〈2〉未払賃金・賞与の支払、(2)傷病休職中に行ったテスト出局により、労働契約上の債務の本旨に従った労務の提供をし、途中でテスト出局が中止され、これにより労務の提供をしなくなったのはYの帰責事由によるものであるとして、〈3〉テスト出局開始から傷病休職満了までの期間について、労働契約に基づき、職員給与規程(職員就業規則)による賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を、(3)テスト出局の中止や解職に至ったことに違法性があると主張し、〈4〉不法行為に基づく損害賠償金(慰謝料)及びこれに対する遅延損害金の支払を求め、さらに、当審において、上記〈3〉の請求につき、(4)仮にテスト出局中にXの行った作業が労働契約上の本来の債務の本旨に従った労務の提供に該当しないとしても、労働基準法及び最低賃金法上の労働に該当し、最低賃金額以上の賃金が支払われるべきであるとして、〈5〉テスト出局開始から傷病休職満了までの期間について、労働契約に基づき、最低賃金額相当の賃金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるために予備的請求原因を追加主張した事案である。
(2)名古屋地裁は、Xの上記〈1〉~〈4〉の請求をいずれも棄却したところ、Xが控訴を提起した。
参照法条 民法709条
労働契約法
労働基準法11条
最低賃金法4条
体系項目 休職/休職の終了・満了
休職/傷病休職
裁判年月日 2018年6月26日
裁判所名 名古屋高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ネ)346号
裁判結果 原判決変更、一部控訴棄却
出典 判例時報2415号63頁
判例タイムズ1462号40頁
労働判例1189号51頁
労働経済判例速報2359号3頁
審級関係 上告、上告受理申立て
評釈論文 森戸英幸・ジュリスト1524号4~5頁2018年10月
今津幸子・労働経済判例速報2359号2頁2018年11月20日
佐々木達也・労働判例1192号5~16頁2019年3月1日
山口浩一郎・労働法令通信2519号24~26頁2019年5月8日
石毛和夫・銀行法務2163巻13号69頁2019年11月
石崎由希子(東京大学労働法研究会)・ジュリスト1538号127~130頁2019年11月
判決理由 〔休職/休職の終了・満了〕
〔休職/傷病休職〕
 「テスト出局は、職員が職場復帰のためのリハビリを行うに当たってYが場を提供するもので、業務ではなく、リハビリの一環であるとされている。しかしながら、テスト出局の後半12週間はフルタイムの出局となり、このうち少なくとも最終6週間は職場の実態に合わせて通常業務を想定した作業を行うとした上、テスト出局中の状況を踏まえ、産業医及び部局長の合意が得られれば復職が命じられるとしており、テスト出局は、単に休職者のリハビリのみを目的としているものではなく、職場復帰の可否の判断をも目的として行われる試し出勤(勤務)の性格をも有していることが認められる」。
 「精神的領域における疾病による傷病休職の場合、休職事由が消滅したか否か、すなわち、傷病が治癒したか否かの判断について休職者側の主治医と使用者側の産業医との見解が対立し、その判断が困難となることがあることから、テスト出局を利用し、その期間中の休職者の作業状況を踏まえて休職事由が消滅したか否かを判断することにより、休職者の現状や職場の実態等に即した合理的な判断が可能となるものと考えられる」。「現にXはうつ病を理由とする傷病休職からテスト出局を経て平成22年11月1日に復職したことがあり、Xにとって現実にテスト出局が職場復帰に有効であったものと認められる」。
 「テスト出局が職場復帰の可否判断を目的としていることに照らすと、テスト出局の最終段階で、休職者に職場の実態に合わせた通常業務を想定した作業を行わせ、その状況を確認することには合理的な理由があると認められる。また、期間の点についても…Xに対し、本件テスト出局を24週間と設定したことは不合理なものとはいえない」。
「本件テスト出局が無給とされ、Xがやむを得ずこれに応じていた面があるとしても、本件テスト出局を違法とまでいうことはできない」。
 「本件テスト出局は、その必要性及び相当性が認められ、就業規則違反とまではいえない。また、本件テスト出局を無給で実施したことに問題が認められるが、健保から傷病手当等が支給されていることなどに鑑みると、本件テスト出局が無給であることをもって、本件テスト出局が違法であるとまではいえない」。
 「Xから報道制作以外の他の業務に対する労務の提供の申出があったことを認めるに足りる証拠は見当たらず」、「精神的領域における疾病で休職していた場合には、職場復帰するときに新たな業務ではなく、従前経験していた業務に復職させるのが相当と考えられること、Xは…相応に高度で責任ある立場で業務を行う地位にあったこと、Xは、職場復帰を目指した本件テスト出局中に、精神的領域における疾病が原因となってテスト出局自体が中止となっていることなどに鑑みると、Xについて他の現実に配置可能な業務があるとは考え難く、Xに復職可能性があったと認めることはでき」ず、「Xは治癒しておらず、休職事由が消滅しなかったとしてXを解職したYの行為は違法とはいえない」。