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ID番号 09238
事件名 未払賃金等支払請求上告、同附帯上告事件
いわゆる事件名 ハマキョウレックス(差戻審)事件
争点 運送会社運転手の正社員有期社員間の労働条件相違の不合理性が争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 (1) 期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結してY(被告、控訴人兼被控訴人、上告人)において勤務しているX(原告、控訴人兼被控訴人、被上告人)が、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)をYと締結している労働者(正社員)とYとの間で、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当、賞与、定期昇給及び退職金(本件賃金等)に相違があることは労働契約法20条に違反しているなどと主張して(1)労働契約に基づき、本件賃金等に関し、正社員と同一の権利を有する地位確認、(2)〈1〉主位的に、労働契約に基づき、無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当及び通勤手当(本件諸手当の差額の支払、〈2〉予備的に、不法行為に基づき、上記差額に相当する額の損害賠償を求めた事案である。
(2) 原審である大津地方裁判所彦根支部は、不法行為請求を一部認容し、その他の請求を棄却したため、XY双方ともに控訴した。
参照法条 民法709条
労働契約法20条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇
裁判年月日 2018年6月1日
裁判所名 最高裁第二小法廷
裁判形式 判決
事件番号 平成28年(受)2099号/平成28年(受)2100号
裁判結果 一部棄却、一部破棄差戻
出典 最高裁判所民事判例集72巻2号88頁
裁判所時報1701号1頁
判例時報2390号96頁
判例タイムズ1453号58頁
金融・商事判例1550号22頁
金融・商事判例1553号8頁
労働判例1179号20頁
労働経済判例速報2346号3頁
労働法律旬報1918号56頁
審級関係 差戻し
評釈論文 大内伸哉・NBL1126号4~12頁2018年7月15日
河津博史・銀行法務2162巻8号68頁2018年7月
中島光孝・季刊労働者の権利326号2~8頁2018年7月
竹内(奥野)寿・ジュリスト1522号4~5頁2018年8月
野川忍・法律時報90巻9号4~6頁2018年8月
富永晃一・論究ジュリスト26号140~151頁2018年8月
平越格・労働経済判例速報2346号2頁2018年7月10日
水町勇一郎・労働判例1179号5~19頁2018年7月15日
慶谷典之・労働法令通信2490号22~23頁2018年6月28日
橘大樹・ビジネス法務18巻9号22~26頁2018年9月
中島光孝・労働法律旬報1918号6~9頁2018年8月25日
宮里邦雄・労働法律旬報1918号10~15頁2018年8月25日
沼田雅之・労働法律旬報1918号16~24頁2018年8月25日
小谷野毅・労働法律旬報1918号38~42頁2018年8月25日
島田裕子・ジュリスト1523号74~79頁2018年9月
中川恒彦・労働法令通信2495号21~27頁2018年8月18日
杉原知佳・経営法曹198号7~18頁2018年9月
小島豊一郎、山畑茂之、木野綾子、渡邊徹、和田一郎、木下潮音、松下守男、沢崎敦一、豊浦伸隆・経営法曹198号22~42頁2018年9月
北岡大介・労働法令通信2496号17~20頁2018年9月8日
野川忍・季刊労働法262号2~3頁2018年9月
本久洋一・季刊労働法262号238~241頁2018年9月
光前幸一・LIBRA18巻11号3~8頁2018年11月
中島崇、村田一広・ジュリスト1525号112~118頁2018年11月
中島崇、村田一広・法律のひろば71巻10号55~63頁2018年10月
神吉知郁子・ジュリスト1526号130~133頁2018年12月
緒方桂子・季刊労働法263号2~12頁2018年12月
道幸哲也・季刊教育法199号102~103頁2018年12月
道幸哲也・法律時報91巻3号137~140頁2019年3月
山畑茂之・労働経済判例速報2366号25~35頁2019年2月10日
山田省三・労働判例1193号89~97頁2019年3月15日
島田裕子・民商法雑誌155巻2号108~136頁2019年6月>
永石一郎・法の支配192巻2号43~60頁2019年1月
中島光孝・法学セミナー64巻3号19~22頁2019年3月
鴨田哲郎・実務に効く 労働判例精選<第2版>(ジュリスト増刊)167~175頁2018年10月
川口美貴・判例評論729号(判例時報2418)176~181頁2019年11月1日
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕
 「労働契約法20条は、有期労働契約を締結している労働者(以下「有期契約労働者」という。)の労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と無期労働契約を締結している労働者の労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない旨を定めている。同条は、有期契約労働者については、無期労働契約を締結している労働者(以下「無期契約労働者」という。)と比較して合理的な労働条件の決定が行われにくく、両者の労働条件の格差が問題となっていたこと等を踏まえ、有期契約労働者の公正な処遇を図るため、その労働条件につき、期間の定めがあることにより不合理なものとすることを禁止したものである。
 そして、同条は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件に相違があり得ることを前提に、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情(以下「職務の内容等」という。)を考慮して、その相違が不合理と認められるものであってはならないとするものであり、職務の内容等の違いに応じた均衡のとれた処遇を求める規定であると解される」。
 皆勤手当に関する相違は不合理であり、Xについて支給要件を満たしているか審理させるために原審に差戻し、無事故手当、作用手当、給食手当、通勤手当に関する相違は不合理であり、Xの請求が認められる。