全 情 報

ID番号 09247
事件名 正社員の地位確認等請求事件(29819号)、損害賠償反訴請求事件(32270号)、雇用関係不存在確認請求事件(21599号)
いわゆる事件名 ジャパンビジネスラボ事件
争点 育休後の契約社員契約に変更合意の有効性などが問われた事案(労働者一部勝訴)
事案概要 (甲事件)被告Yとの間で無期労働契約(本件正社員契約)を締結していた原告Xが、育休後、有期労働契約(本件契約社員契約)を締結したことについて、主位的には、本件正社員契約の解約合意は、均等法および育介法に違反する等無効であるとして、本件正社員契約に基づく地位確認および未払賃金を求め、予備的には、労働条件の正社員に戻れるとの停止条件付無期労働契約を締結したとして、本件正社員契約に基づく地位確認および未払賃金をもとめ、仮に正社員としての地位が認められないとしても、YがXに対してなした本件契約社員契約の更新拒絶は無効であるとして、本件契約社員契約に基づく地位確認および未払賃金を求めた事案である。これに対してYは、Xが本訴提起したことにつき記者会見を行った際、Yの信用等が毀損されたとして、損害賠償を求める事案である。
(乙事件)YはXに対して本件契約社員契約に基づく地位にないことの確認を求めた事案である。
参照法条 民法709条
民法710条
民事訴訟法134条
民事訴訟法135条
民事訴訟法221条
労働契約法8条
労働契約法19条
育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律10条
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律9条
体系項目 女性労働者(民事)/育児期間
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(25)担務変更・勤務形態の変更
解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否 (雇止め)
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2018年9月11日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)29819号/平成28年(ワ)32270号/平成27年(ワ)21599号
裁判結果 一部却下、一部認容、一部棄却(29819号)、棄却(32270号)、却下(21599号)
出典 労働判例1195号28頁
労働法律旬報1925号47頁
審級関係 控訴
評釈論文 圷由美子・労働法律旬報1925号40~41頁
石崎由希子・ジュリスト1532号107~110頁2019年5月
出口かおり・労働法律旬報1942号6~9頁2019年8月25日
野田進・労働法律旬報1942号10~26頁2019年8月25日
山田省三・労働法律旬報1942号27~37頁
判決理由 〔女性労働者(民事)/育児期間〕
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(25)担務変更・勤務形態の変更〕
 「Xにとって、本件合意により得る法的な地位は、これをせずに育児休業終了を迎えた場合に置かれる地位と比較して有利なものであり、本件合意は、その当時のXの状況に照らせば、必ずしも直ちにXに不利益な合意とまではいえず、そうであるからこそ、Xは子を入れる保育園が決まらないという事情を考慮し、Y代表者から本件契約社員契約の内容につき説明を受け理解した上で、本件合意をしたものと認められる。したがって、これがXの真意によらないYの強要によるものとは認められず、本件合意は、Xに対する均等法9条3項及び育介法10条にいう不利益な取扱いに当たらない」。
〔解雇(民事)/短期労働契約の更新拒否 (雇止め)〕
 「Yが本件契約社員契約の更新を拒絶する客観的に合理的な理由に当たり得る事実は、〈1〉…就労時間中にY代表者の同意を得ず一方的に録音を開始し、退出を命じたY代表者の指示に従わずY代表者の後を追ったこと、〈2〉就業時間中に業務用のパソコンを用いて上記業務外の電子メールの送受信をしたことの二点にとどまる。そして、Xの上記各行為のみよっても、更新の合理的期待が認められる本件契約社員契約について、Yが本件契約社員契約の更新を拒絶することが客観的に合理的な理由が十分にあるとは容易に解し得ず、雇止めが社会通念上やむを得ないものと解するには足りない。すなわち、本件雇止めは、客観的に合理的な理由を欠くものであり、社会通念上相当であると認められない。」
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 「Yは、Xが正社員への契約再変更を「前提」とするYの立場を踏まえて契約社員から正社員への復帰を求めたのに対して、Yは、Xを正社員に戻す労働契約の締結に係る交渉において不誠実な対応に終始して、Xを正社員に復帰させる時期や条件等について具体的かつ合理的な説明を何ら行わなかったものであるから、契約準備段階における交渉当事者間の信義則上の義務に違反したものと認められ」、Yは不法行為に基づき、これによってXが被った損害を賠償するべき義務を負う。
 Xの記者会見での発言がYの信用を毀損したかについて、Xの「発言がそれのみによってYの名誉や信用が毀損される行為であるとは認められ」ず、「仮に本件記者会見に係る報道を見聞した者がそれのみによりYに対する評価を低めたとしても、それは、当該報道機関による報道の仕方によるか、あるいはその者の偏った受け止め方というべきことであって、これが直ちに本件発言の結果であると解することは相当でない。」