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ID番号 09254
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 甲府市・山梨県(市立小学校教諭)事件
争点 校長のパワー・ハラスメントについての損害賠償請求が争われた事案(労働者勝訴)
事案概要 小学校教諭である原告Xが、平成24年度に勤務していたY市立L小学校(L小)のM校長からパワー・ハラスメントを受けてうつ病に罹患し、休業し、精神的苦痛を受けたなどと主張して、被告Y2市に対しては国家賠償法1条1項に基づき、被告Y1県に対しては同法3条1項に基づき、損害額合計517万2183円及び遅延損害金の連帯支払を求める事案である。
参照法条
体系項目 労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2018年11月13日
裁判所名 甲府地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成27年(ワ)227号
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労働判例1202号95頁
審級関係 確定
評釈論文 星野豊(教育と法研究会)・月刊高校教育52巻11号100~103頁
判決理由 〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 M校長は、Xを一方的に非難し、Xに対し、職務上の優位性を背景に、職務上の指導等として社会通念上許容される範囲を逸脱し、多大な精神的苦痛を与え、その後Xがうつ病を発症した後もM校長は、X宅に電話をかけた上、Xの了解を取ることなく、Xの主治医であるP医師に電話をかけ、P医師が守秘義務を理由に説明を断ったにもかかわらず、P医師の下を訪れて、Xの症状について聞き出そうとしたものであり、これを知った原告に対して、多大な精神的負担を与えたといえ、M校長の言動は、業務の適正な範囲を超え、自己の言動に関連してうつ病に罹患して休業中の原告に対する対応として社会通念上許容されるものではないから、不法行為を構成すると解される。
 Y2市が設置するL小の校長であるM校長が、その職務を行うについて故意又は過失によって違法にXに損害を加えたと認められるから、Y2市は原告に対して国家賠償法1条に基づく損害賠償責任を負い、M校長はY1県が給与を負担している県費負担教職員であるから、Y1県は、同法3条1項に基づき、Y2市とともに損害賠償責任を負う。