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ID番号 09256
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 日本ビューホテル事件
争点 定年後有期労働契約と無期労働契約との間の労働条件の相違の不合理性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 不動産の賃貸、ホテル、旅館及び観光施設の経営等を目的とする被告Yを定年退職後にYとの間で期間の定めのある労働契約(有期労働契約)を締結して就労していた原告Xが、当該有期労働契約と定年退職前の期間の定めのない労働契約(無期労働契約)における賃金額の相違は、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違であり労働契約法20条に違反するとして、Yに対し、不法行為による損害賠償請求として定年退職前後の賃金の差額相当額688万0344円及び遅延損害金の支払を求める事案である。
参照法条 労働契約法20条
体系項目 労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇
労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2018年11月21日
裁判所名 東京地裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(ワ)3563号
裁判結果 棄却
出典 労働判例1197号55頁
労働経済判例速報2365号3頁
審級関係 確定
評釈論文 峰隆之・ジュリスト1533号120~123頁
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)/均等待遇/(14)短時間・有期雇用労働者と均等待遇〕
〔労働契約(民事)/労働契約上の権利義務/(23)使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 「本件において嘱託社員時及び臨時社員時のXの労働条件と比較対照するのは、まずはY1事業所において役職定年により営業課支配人の地位を離れた定年退職前の者となるが、定年退職前のX自身のほかに上記のような正社員の例は証拠上見当たらないから、労働条件の具体的相違やその不合理性の判断における職務の具体的内容については定年退職前後のXの職務内容を比較することとなる」。
 Xの定年退職時と嘱託社員及び臨時社員時の業務の内容及び職務の内容は大きく異なる上、職務の内容及び配置の変更の範囲にも差異があるから、嘱託社員及び臨時社員の基本給ないし時間給と正社員の年俸の趣旨に照らし、Xの嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給が定年退職時の年俸よりも低額であること自体不合理ということはできない。
 「その他の事情についてみるに、定年退職時の年俸額はその職務内容に照らすと激変緩和措置として高額に設定されている上(前記オ(ア))、正社員の賃金制度は長期雇用を前提として年功的性格を含みながら様々な役職に就くことに対応するように設計されたものである一方で、嘱託社員及び臨時社員のそれは長期雇用を前提とせず年功的性格を含まず、原則として役職に就くことも予定されておらず、その賃金制度の前提が全く異なるのであり(前記オ(イ))、このような観点からみても、正社員時の賃金額と嘱託社員及び臨時社員時の賃金額に差異があること自体をもって不合理といえないことは明らかであ」り、「原告の定年退職時の年俸の月額と嘱託社員及び臨時社員時の基本給及び時間給の月額との相違が不合理であると認めることはできず、これをもって労働契約法20条に違反するということはできない」。