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ID番号 09265
事件名 遺族補償給付不支給処分取消等請求控訴事件
いわゆる事件名 国・厚木労基署長(ソニー)事件
争点 適応障害を発症した後自殺した亡社員について業務起因性が問われた事案(労働者敗訴)
事案概要 (1) 本件会社に勤務していた亡Mが、上司によるパワハラ、退職強要、配置転換、長時間労働、重度の病気やケガに当たるけいれん発作等の業務上の原因によって大うつ病性障害を発病し、自殺したと主張して、亡Mの両親であるX(原告、控訴人)らが本件監督署長に対して労災保険法に基づき遺族補償給付及び葬祭料の支給を申請したところ、本件監督署長がこれらを支給しない旨の本件各処分をしたので、Xらが、Y(国。被告、被控訴人)に対し、本件各処分の取消しを求めた事案である。
(2) 東京地裁は、亡Mは適応障害を発症し、その増悪の結果として軽症うつ病エピソードを発症したものと認定したが、これらの亡Mの精神障害の発症について業務起因性を認めず、請求をいずれも棄却したので、Xらが原判決を不服として控訴した。
参照法条 労働者災害補償保険法16条
労働者災害補償保険法17条
体系項目 労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性
裁判年月日 2018年2月22日
裁判所名 東京高裁
裁判形式 判決
事件番号 平成29年(行コ)30号
裁判結果 控訴棄却
出典 労働判例1193号40頁
審級関係 上告、上告受理申立て
評釈論文 小西康之・ジュリスト1503号4~5頁2017年3月
富永晃一・季刊労働法260号224~235頁2018年3月
伊藤克之・季刊労働者の権利325号94~102頁2018年4月
永原豪・経営法曹197号51~58頁2018年6月
判決理由 〔労災補償・労災保険/業務上・外認定/(2) 業務起因性〕
 「Xらは、当審において障害者が勤労の権利(憲法27条1項)を有することなどを根拠として障害という要素・属性を考慮に入れて認定基準による心理的負荷の判断をすべきであると主張する」。
 しかしながら「労災保険法に基づく保険給付は、客観的に業務に内在する危険性が実現したことに対する給付であって、労働者の障害という事実を業務自体に内在する危険とみることはできず、認定基準により業務起因性を判断するに当たり、障害の事実を考慮に入れるとする見解を採用することはできない」。
 適応障害を発症する約6か月前以降に存在した亡Mに心理的負荷を与えるような出来事は、関係者等の亡Mに対する言動、けいれん発作であり、「これらの出来事により生じた心理的負荷の程度はいずれも「中」で、これらを総合的に考慮しても「中」程度の心理的負荷を与えるにとどまると認めるのが相当であるから、適応障害の発病前おおむね6か月の間に業務による強い心理的負荷は認められない」。
 「軽症うつ病エピソード発病について、「特別な出来事」としての強い心理的負荷があったと評価される出来事があったことを基礎づける複数の出来事も認められず、本件では、平成22年6月頃に業務上の原因とは認められない適応障害を発症し、亡Tが精神的に脆弱な状態であったところに退職強要を受け、同年8月頃に軽症うつ病エピソードを発症したとみるのが相当であり、同発症については業務起因性を認めることはできない。」