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ID番号 10087
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名
争点
事案概要  年少者についての変形労働時間の規定(労基法六〇条三項)違反の管轄裁判所について争われた事例。
参照法条 労働基準法60条3項
労働基準法119条1号
体系項目 年少者(刑事) / 未成年者の時間外労働
裁判年月日 1962年9月14日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (あ) 632 
裁判結果 破棄(差戻)
出典 刑集16巻9号1366頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年少者-未成年者の時間外労働〕
 労基法三二条一項は、使用者は労働者に休憩時間を除き一日について八時間、一週間について四八時間を超えて労働させてはならないと規定する。これは労働者に対する原則規準であるが、年少者に対しては同法六〇条の特別規定を設け、同三項において、満十五才以上満十八才に満たない者については右三二条一項の規定にかかわらず、一週間の労働時間が四八時間を超えないかぎり、一週間のうち一日の労働時間を四時間以内に短縮する場合においては他の日の労働時間を十時間まで延長することができると規定している。すなわち、この種の年少者に対しては同法六〇条三項をもつて労働時間の基準規定となす趣意であることはあきらかである。
 そして、少年法三七条は、右六〇条三項の罪に関する成人の事件については、公訴は家庭裁判所にこれを提起しなければならないと規定する。
 本件は、労基法六〇条三項に違反する罪に関する成人事件であることは記録上あきらかであるから、検察官は少年法三七条に従つて本件を家庭裁判所に公訴を提起すべきにかかわらず、これを下妻簡易裁判所に起訴したことは管轄を誤つた違法あるものというべく、これを看過した本件第一審判決ならびに原判決はいずれも管轄違の違法あるものといわざるを得ない。そして、この種労基法六〇条三項に掲げる成人の事件については、家庭裁判所が専属管轄権を有するものであることは当裁判所の判例とするところである。(昭和三〇年(さ)第三号昭和三二年二月五日第三小法廷判決、昭和三二年(さ)第三号同年八月二三日第二小法廷判決)
 よつて、上告人の弁護人らの上告趣意について判断するまでもなく、刑訴四一一条、四一二条により裁判官池田克、同奥野健一の反対意見があるほか全裁判官一致の意見をもつて主文のとおり判決する。
 職権をもつて本訴の管轄について審査する。