全 情 報

ID番号 10090
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 料理店「ばっぱ」事件
争点
事案概要  満一八歳に満たない女子を酒宴の席に侍らせて客の相手をさせたことが、労基法六三条二項に違反するとして起訴されたケースにつき、弁護人により本件では使用従属関係がなく労基法上の労働者ではないと主張された事例。
参照法条 労働基準法62条2項
労働基準法119条1号
労働基準法9条
労働基準法11条
体系項目 労基法総則(刑事) / 労働者
賃金(刑事) / 賃金の意義
年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務
裁判年月日 1962年11月14日
裁判所名 福島家郡山支
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果 有罪(罰金3,000円)
出典 家裁月報15巻3号189頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-労働者〕
〔賃金-賃金の意義〕
〔年少者-未成年者の危険有害業務〕
 労働基準法(以下基準法という)にいう労働者とは、基準法の適用を受ける事業中の作業について他人の指揮命令のもとに労働し、その労働の対価として賃金が支払われる者であり、使用者とは、労働者の職場生活に対し指揮命令し又は監督する地位にある者であると解されるところ、本件についてみるに
 被告人は
 一、簡易料理店Aを経営していたものであること
 一、B等四名の男子客が、被告人方で、酒宴を催したところ、満一八歳に満たないC等三名の高校生をしてその酒席に侍つて客の相手をし接待をさせたこと
 一、C等が酒席で客の接待をすることに対しては、その報酬として客からチップが貰えるが、若し客が任意チップを出さないときは、被告人に於て客に請求して得たチップを同女等に与えることを約して同女等を酒席に侍らせたこと
 以上の事実が認められ、仮令客から受取るチップであつても、苟くも労働の対価であると認められる以上被告人とC等三名の女子との間に使用従属関係を認むべきであるから弁護人の主張は賛同できない。
 なお、女子年少者労働基準規則は、基準法第六三条第二項の規定により満一八歳に満たない者を就かせてはならない義務として「酒席に侍する業務」を掲げているが、その「業務」とは、労働者が就かせられる仕事と解せられ反覆継続することはその要件ではないと思料されるので、本件の場合C等は一夜酒席に侍つて客の相手をしたに過ぎないが、もとより基準法違反の対象となるものと考える。