全 情 報

ID番号 10171
事件名 暴力行為等処罰に関する法律違反、住居侵入被告事件
いわゆる事件名 淀川製鋼所事件
争点
事案概要  寄宿舎における住居侵入事件において、会社が外来者を退去せしめようとする行為と寄宿舎管理権の関係が争点となった事例。
参照法条 労働基準法94条
体系項目 寄宿舎・社宅(刑事) / 寄宿舎の自治・秩序
裁判年月日 1954年6月11日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和29年 (う) 268 
裁判結果 棄却
出典 高裁刑特報28号144頁/裁判資料123号136頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔寄宿舎・社宅-寄宿舎の自治・秩序〕
 案ずるに労働基準法第九十四条によれば使用者の寄宿舎に寄宿する労務者はその寄宿生活につき自治権を有することは明かであるけれども、それあるが故に他面使用者の有する寄宿舎管理権の正当な行使までも妨げることは許されない。そして本件は当時A寮に寄宿する寮生でない多数の外来者が寮生に加わり解雇反対の気勢をあげ不穏の事態発生が危惧せられるに至つたので、これを回避するためその対策として会社が一応外来者を退去せしめんとしたのであるから使用者たる会社のこの寄宿舎管理権行使は外来者に対してなされたのであり、何等寮生の右自治権を侵害するものでなく且つ又正当の事由に基くものとみなければならない。従つて所論寮生の有する自治権を云為して会社側の権限行使を不当視するわけにはいかないのであつて、その他記録に徴しても会社が本件百島寮から外来者を退去せしめんとした措置が不法であると認めるに足りる何等の資料もない。そして又前記原判決の判示の仕方が所論のように寮生の自治権を全然否定したものであるとは解し難く、原判決には所論の如き事実誤認又は法令の解釈を誤つた違法等は一も存在しないから論旨はすべて理由がない。