全 情 報

ID番号 10198
事件名
いわゆる事件名 大橋製材所事件
争点
事案概要  年少者に対する危険有害業務の事例において、丸のこ盤製材における中押し業務が、女子年少者労働基準規則にいう木材送給の業務にあたるか否かが争われた事例(肯定)。
参照法条 労働基準法62条2項(旧63条2項)
労働基準法119条1号
体系項目 年少者(刑事) / 未成年者の危険有害業務
裁判年月日 1951年3月15日
裁判所名 松江家
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果
出典
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年少者-未成年者の危険有害業務〕
 (法令の適用)判示事実は、労働基準法第六十三条第二項第四項、女子年少者労働基準規則第十三条第二十四号に違反し、前示法第百十九条第一号に該当する
 (中略)
 被告人並びに弁護人は判示所謂中押し業務は俗にはな取り(端取り)業務の補助的役割を有するに過ぎないものであつて、その作業は軽微簡易にして危険性極めて少く、前示法条に所謂『木材の送給の業務』に該当しない旨主張するので按ずるに本件縦びき用丸のこ盤製材トロ車付き二人作業は元押し、はな取り(端取り)および中押し(又はトロ押し)の三人をもつてするものであつて、元押しとは「のこ」の前面に位置し、作業全体の指揮者として木材の移動を調節しながら木材を元から「のこ」の方に押し後記の如く中押しの作業と相俟つて木材を「のこ」に「かまし」、はな取り(端取り)とは元押しと「のこ」を中にしてこれと対面して位置し、すでに「のこ」にかまされ「のこ」から送り出された木材の端を取つてこれを手前に引き、木材が切断されるや、その挽き材を整理し、中押しとは、元押しとはなとり(端取り)の中間、「のこ」に近接して位置し一方の手で元押しによつて送り出された木材積載のトロ車を、「のこ」に向つて引きながら「他方の手でトロ車に乗つた木材を定規に押し付けこれを「のこ」に「かます」作業であることは(中略)供述を綜合して、これを認めることができる。そうして右各証拠に徴し以上三種の業務の危険性の程度について考えると、元押しは作業全体の指揮官として常に「のこ」に近接し木材を元から「のこ」の方に押し、これを「のこ」に「かます」作業であるからもつとも危険であり、そうしてはなとり(端取り)はすでに「のこ」にかまされ、「のこ」から送り出された木材を受け、これを引き且つ挽き材を整理するのであるから、その「のこ」から受ける危険は割合少く、中押しは前記説示のごとく一面木材を積載したトロ車を引くのでこの意味にてはなとり業務と類似してその危険性は極めて低いけれども他面トロ車に乗つた木材を定規に押し付け、これを「のこ」に「かます」作業は元押し作業に類する役割を演じ、その手は常に急回転する「のこ」に近接して動作をするので、相当の危険性を有することはこれを頷するに難くないところである。ひるがえつて前示法条に年少者の就業制限として、縦びき用丸のこ盤に於ける木材の送給の業務を規定したのは丸のこ盤製材作業に於て急回転する丸のこから、通常生ずることあるべき危険を予想し、注意能力の充分でない年少者の安全保護を考慮に入れたことは明らかであつて、此の趣旨から考え所謂「木材を送給する業務」とは「のこ」に木材を「かます」作業を指称するものと解すべきであることはほとんど疑を容れないところである。果して然らば、右作業を為す以上その元押したると中押したるとを問わずこれを所謂木材送給業務と解すべきところであり、ただはなとり(端取り)は前叙のように木材を「のこ」に「かます」作業を要しないので、これを木材送給業務に含まれないと解すべきであること勿論である。