全 情 報

ID番号 10259
事件名
いわゆる事件名 奥谷木工事件
争点
事案概要  代表権のない取締役が労基法違反(女子年少者の時間外労働違反)の行為である場合、労基法一二一条の両罰規定の適用があるか否かが争われ(肯定)、また同条但書の「違反に必要な措置」の意義が争われた事例。
参照法条 労働基準法121条1項
体系項目 罰則(刑事) / 両罰規定
裁判年月日 1950年11月25日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和25年 (う) 1019 
裁判結果
出典 裁判資料222号256頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔罰則-両罰規定〕
 論旨は本件の違反行為者は被告会社の機関たる取締役Aであつて同人は労働基準法第百二十一条第一項本文に云う「事業主のため行為した代理人でも使用人でもその他の従業者」でもないから事業主たる被告会社に対しては同条の罰金刑を科することはできないと主張する。労働基準法第百二十一条第一項本文には通常の用例(たとえば食糧管理法第三十七条物価統制令第四十条、労働者災害補償保険法第五十四条、失業保険法第五十五条等)と異り「法人の代表者」なる文辞のないために、事業主が法人である場合の代表者が違反行為をした場合には同条第一項の適用なく事業主たる法人は処罰されないから、かの疑問を生ずる余地がある。しかし、これはあくまでも「法人の代表者」が違反行為者である場合の疑問であつて、たとえ行為者が会社の取締役であつても代表権のない場合はその者は明らかに「事業主のために行為した……その他の従業者」に含まれるのである。
 (中略)
 所論の「違反の防止に必要な措置をした場合」とは当該違反を防止するために客観的に必要と認められる措置をした場合であつて単に一般的に労働基準法第何条の違反なきよう防止せよと注意したのみでは足りない。本件において証拠上認められるところでは被告会社代表社Bは原材料の仕入、製品の販売の面を担当して不在勝ちであり、二男C取締役に会社の労務管理を含む一切の業務の指揮監督を委ね、時折時間外労働につき注意を与えていたに止り、少しも具体的且相当な手段方法を示して違反の防止に努めていたものではないから到底法の要求する免責事由としての「必要な措置」をしたものとは認め得ない。