全 情 報

ID番号 10296
事件名
いわゆる事件名 日本エナメル事件
争点
事案概要  労働者の希望による時間外労働等、労働時間違反について使用者の責任が問題となった事例。
参照法条 労働基準法60条
労働基準法119条
労働基準法121条
体系項目 年少者(刑事) / 未成年者の時間外労働
罰則(刑事) / 両罰規定
裁判年月日 1949年6月23日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果
出典
審級関係
評釈論文
判決理由 〔年少者-未成年者の時間外労働〕
〔罰則-両罰規定〕
 法律に照らすと被告人Yの行為は、労働基準法第三十二条第一項に違反し、第百十九条第一号、刑法第四十五条前段に該る罪であり、被告会社は、労働基準法第百二十一条に依つて事業主として、罰金刑の制裁を受けなければならない。そこで如何なる刑を量定すべきかに付いて考えて見るに、(中略)被告会社は専ら輸出向琺瑯鉄器の製造を業としているが、其の製品は、現時我国の輸出の実情に照らして、その輸出の時期、即ち製品の納期に厳重な制限があるため、組合側からは会社に対し臨時工の傭入方を申出で、会社は之に応じて傭入れたが、事業の性質上、相当熟練を要し、臨時工では間に合わぬので、組合側は更に協議の上、会社に改めて止むを得ない措置として、本件年少労働者の時間外労働を申出で、会社側も組合側の契意に動かされて之を応諾したものであり、本件年少労働者の内には其の細腕によつて辛うじて一家の生計を支えているものもあり、年少労働者から進んで時間外労働に依つて多少とも賃金の増収を希望し、その旨組合側に申出で、組合も之を誇として会社側に本件時間外労働を申出でたものであり、本件検挙を見て時間外労働が出来なくなつたため、生活に窮したもので退社を見るに至つたことすらある事実、本件年少労働者の職場における労働の態様も極めて軽微で、其の身に及ぼす影響も極めて少いと認められること、本件時間外労働も短時間であつたこと(中略)などの事情を斟酌し、被告人Yに対しては時に罰金刑を選択して、刑法第四十八条を適用して、その範囲内で被告人Yを罰金三千円に処し、………この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予し、被告会社に対しては罰金五千円に処するのを相当と考える。