全 情 報

ID番号 10344
事件名
いわゆる事件名 天野飯場事件
争点
事案概要  「父がケガをしたからすぐ帰れ」という電報を労働者に渡すにあたって逃亡の常套手段である話をして帰郷に承諾を与えず意思に反して飯場にとどめて就労させたことが強制労働にあたるか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法5条
労働基準法117条
体系項目 労基法総則(刑事) / 強制労働
裁判年月日 1948年11月7日
裁判所名 福島地
裁判形式 判決
事件番号
裁判結果
出典
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法総則-強制労働〕
 昭和二十三年七月末頃被告人Y1に雇われ前記Aの飯場に居た人夫Bが前日映画を見て寝不足であつたため右A工事場のウインチ場で作業を中止し居眠りをして居るのを見かけるや之を怒鳴りつけ長さ三尺位の生割木で其の身体を殴打して暴行を加え同人の意志に反して強いてトロ押し作業を継続せしめて労働を強制し
 (三) 同年八月一日被告人Y1に雇われ右Aの飯場に居た人夫Cが自宅から帰り疲労のため仕事に出ずに右飯場に居るのを見かけるや仕事に出よと要求したが之に応じなかつたところから立腹し同飯場内の大部屋で同人に対し土間にあつた下駄を以て其の後頭部を数回殴打し更に其の頭髪を掴んで土間に引摺り出して暴行を加え因つて左腕及び右足等に出血の傷害を与え
 第三 被告人Y2は昭和二十三年七月下旬頃前記Bが自己の為すべき坑内作業を厭い右A工事場坑外作業場でトロ押し作業をして居るのを見かけるや其の場でスコップを以て五、六回殴打して暴行を加え同人の意思に反して強いて坑内作業を為さして労働を強制し
 (中略)
第五 被告人Y3は
 (一) 昭和二十三年七月下旬頃前記人夫Bが右A工事場の坑内作業場から便所に行くと云つて坑外に出たまま帰らなかつたので坑外に出て見たところ同所で同人が寝て居るのを見付けたので寝ては居かん働けと怒鳴りつけ其の場で同人に対し其の足を蹴つて暴行を加えて坑内に連れ戻し同人の意志に反して強いて坑内作業を継続せしめて労働を強制し
 (中略)
 第六 被告人Y1及びDは昭和二十三年七月二十七、八日頃前記熱海町の本部から被告人Y1に雇われ前記Aの飯場に居た人夫E宛同人の父が怪我をしたから直ぐ帰れと云う趣旨の電報が来て居る旨の電報を受けるや暗黙裡に同人の帰郷を阻止して労働を継続させようと合意し同右Aの前記会社詰所で右電報の来て居ることを聞いて帰郷の承諾を求めに来た同人に対し本来電文の真実を告げ帰郷は其の自由意思に委すべきであつたにも拘らず事実を歪曲して右電報を前に右飯場を逃亡した者達の作り事であるかの様に取扱い帰郷の承諾を与えず同人の帰郷の意志を不当に拘束し其の意志に反して強いて飯場に留め作業に従属せしめて労働を強制