全 情 報

ID番号 10503
事件名 職業安定法違反被告事件
いわゆる事件名 クリニック「ラブハウス」事件
争点
事案概要  男性クリニックの業務が職安法六三条二号にいう「公衆道徳上有害な業務」にあたるか否かが争われた事例。
参照法条 職業安定法63条2号
体系項目 女性労働者(刑事) / 福祉に有害な業務
裁判年月日 1985年3月12日
裁判所名 福岡高
裁判形式 判決
事件番号 昭和59年 (う) 597 
裁判結果 破棄・自判・確定
出典 高刑速報60号337頁
審級関係 一審/長崎地/   .  ./不明
評釈論文
判決理由 〔女性労働者-福祉に有害な業務〕
 関係証拠から明らかなように、被告人は男性クリニツク「A」長崎店の店長をしていたものであるが、同店には客室(個室)が五あり、コンパニオンと称する女性従業員がその一室内で不特定多数の男性客と一対一でサービスに当たり、その対価(三〇分で七、〇〇〇円という高額なものである)を取得するものであるが、業務内容は、男性客は全裸、女性従業員は全裸もしくはこれに近い姿となり、男性客の陰茎を手でこすつたり(手淫)、口に含んだり(口淫)して射精させるというものであつて、右は公衆道徳上有害な業務と認めるのが相当である。もつとも、手淫や口淫は性交ではないから対価を得ても売春ではなく、法律によつて直接禁止されたものでないことは所論指摘のとおりであるが、右は売春類似行為によつて収益を図るものであり、社会一般の通常の倫理観念に抵触しその維持に支障を来し、社会共同生活に害を流すものであるから、公衆道徳上有害性は否定できないところである。そして、公衆道徳上有害な業務に就かせる目的で労働者の募集を行えば、それが人身売買行為とはいえなくても、職業安定法六三条二号に該当することは明らかである。