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ID番号 10575
事件名 労働基準法違反被告事件
いわゆる事件名 小原産業事件
争点
事案概要  家屋建築請負業を営む者が工場の増設工事の請負に際して、既設工場の織機動力用のシャフトについて配下労働者が接触する危険があるのに、それに囲いを設けなかったとして労働基準法(旧)四二条違反で起訴された事件。
参照法条 労働基準法42条
体系項目 労働安全衛生法 / 危険健康障害防止 / 危険防止
裁判年月日 1970年3月13日
裁判所名 福井簡
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ろ) 64 
裁判結果 無罪(控訴)
出典 時報619号106頁
審級関係 上告審/10578/三小/昭47. 6. 6/昭和46年(あ)989号
評釈論文
判決理由 〔労働安全衛生法-危険健康障害防止-危険防止〕
 被告人は、家屋建築請負業を営み、昭和四四年二月はじめ以来、石川県加賀市(略)甲所在A株式会社分校第二工場の増築工事を請負い、配下労働者を右工事現場で働かせていたところ、同月一八日配下労働者たるB、Cほか二名に天井下地作業、および既設工場と増築工場との境をなす間仕切下見板取り外し作業を行なわせるに際し、天井下地作業のための足場板の上方約六五糎のところに、右間仕切下見板を貫き一、〇七米突出し回転している右既設工場の織機動力用シャフトに、右B・Cらの配下労働者が作業中接触する危険があるにもかかわらず、囲・覆・又はスリーブを設けなかったものである。
というのである、よって案ずるに、
 本件全証拠を綜合すると、公訴事実記載の事実を認めることができる。そこで右事実が被告人に課せられた義務であるか否かを検討する。
 検察官は、右事実は労働基準法四二条、一一九条一号、労働安全衛生規則六三条一項に該当すると主張するが、労働基準法四二条によれば、「使用者は、機械・器具その他の設備、原料若しくは材料又はガス、蒸気、粉じん等による危害を防止するために、必要な措置を講じなければならない。」と規定し、同法四五条により、同法四二条の規定によって講ずべき措置は、命令で定めることになっており、右命令は、労働安全衛生規則であるところ、本件公訴事実に主張する動力用シャフトに対する危害防止措置は右労働安全衛生規則六三条に基くものであるが、労働基準法四二条の使用者が講ずべき危害防止措置の対象は、使用者の使用する労働者が右使用者の工場、事業場等の作業場において労働者が直接取扱い、または接触する使用者の機械・器具その他の設備であると解するところ、本件動力用シャフトは、被告人が配下労働者であるB、C等に使用させる機械・器具その他の設備と解することはできない、そうすると本件公訴事実は労働基準法違反の犯罪構成要件に該当しない、従って罪とならないから刑事訴訟法三三六条により被告人に対し無罪の言渡をする。