全 情 報

ID番号 10583
事件名 労働基準法違反、業務上過失致死被告事件
いわゆる事件名 塚野酒造事件
争点
事案概要  本洗浄機を使用して洗びん機を洗浄する作業における感電死死亡事故につき、労働安全衛生規則(旧)一二四条の六、一二五条の二にいう「湿潤している場所」とは、その場所が常時湿潤しているか、少なくとも 右各条所定の器具等を使用する際には常に湿潤するに至り、そのために漏電による感電事故を生じやすい場所とし、三〇〇〇円の罰金が科された事例。
参照法条 労働基準法42条
労働基準法45条
労働安全衛生規則124条の6
労働安全衛生規則125条の2
体系項目 労働安全衛生法 / 危険健康障害防止 / 危険防止
裁判年月日 1974年7月8日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (う) 3255 
裁判結果 破棄自判(上告)
出典 高裁刑集27巻4号307頁/東高刑時報25巻7号58頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働安全衛生法-危険健康障害防止-危険防止〕
 控訴趣意のうち、原判示の労働基準法違反の各事実についての事実誤認を主張する点について。
 論旨は、原判決は、原判示の洗びん場が、旧労働安全衛生規則第一二四条の六、第一二五条の二にいう湿潤する場所に該当するとして、被告人会社の常務取締役である被告人Yが、本件洗浄機の電路に漏電しや断装置を接続しなかつたことが、労働基準法第四二条、第四五条、右規則第一二四条の六に、また、非防水型コードコネクターを使用したことが、同法第四二条、第四五条、右規則第一二五条の二に違反した旨認定しているけれども、右洗びん場は、二か月に一回位の割合で洗びん機を洗浄する際に多少ぬれる程度で、平素は乾燥しているから、右規則各条にいう湿潤する場所には該当せず、また、被告人会社においては、感電防止のために必要な措置を講じていたものであるから、原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認がある、というのである。
 そこで、記録を調査し、当審における事実の取調の結果を参酌して検討すると、まず、右規則第一二四条の六、第一二五条の二にいう「湿潤している場所」とは、その場所が、常時湿潤しているか、少くとも、右各条所定の器具等を使用する際には常に湿潤するに至り、そのために漏電による感電事故を生じやすい場所を指すものと解せられるところ、本件洗浄機および本件コードコネクターが使用された場所は、一の(二)の(5)、(6)において判示したように、常時湿潤していたり、これらを使用する場合に常に湿潤するものではないから、右各条にいう「湿潤している場所」には該当しないものであることは、所論の指摘するとおりである。
 したがつて、本件において、非防水型の本件コードコネクターが使用されたことは、右規則第一二五条の二に違反するものではなく、また、それが原因となつて本件事故が発生したものであるとはいえ、本件事故は、右規則に従つて、本件洗浄機の電路に漏電しや断装置を接続する等の措置を講じることによつて、これを防止しえたものであるから、本件コードコネクターを使用したことが労働基準法第四二条に該当するものでもないというべきである。よつて、被告人Yが非防水型の本件コードコネクターを右規則第一二五条の二にいう湿潤する場所で使用したとして、被告人両名の関係において労働基準法第四二条違反の罪を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな事実の誤認があり、原判決は破棄を免れない。論旨はこの点において理由がある。