全 情 報

ID番号 00002
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 朝日新聞事件
争点
事案概要  共産党員又はその同調者であることを理由とする報道関係従業員の解雇につき、地位保全仮処分申請を却下した事例。
参照法条 労働基準法3条
日本国憲法14条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 1950年9月9日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和25年 (ヨ) 125 
昭和25年 (ヨ) 126 
昭和25年 (ヨ) 131 
裁判結果
出典 裁判所時報66号5頁
審級関係
評釈論文
判決理由  (三)次ぎに日本共産党員又は其の同調者であると言う理由で之を解雇する事が労働基準法第三条に違反するか否かに付て審究するに、本条は憲法第十四条を具体化したもので其の立法理由は同条と全く同一であるから、同条について前述したところは其のまま本条の解釈に援用せられ得る。即ち第一に本条に言う信条とは、宗教的信条を意味する。仮りに政治的信条をも含むと解しても次の理由に依り本件解雇は同条違反とならない。即ち
 (イ)本条は「使用者は労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として賃金其他の労働条件に付て差別的取扱をしてはならない」と規定してゐるから之は本来採用後職場に於ける賃金、労働時間其他の労働条件の無差別取扱を規定してゐる趣旨である事は明らかであって、右の「賃金其他の労働条件」の中に採用や解雇の条件迄も含めることは解釈上無理である。従って本条は国籍、信条、社会的身分を理由に解雇する事に付ては何等定めてゐるのではなく、其の解雇理由の当否は他の法律の解釈に委ねられてゐるのである。
 (ロ)解雇は賃金等の労働条件に付て差別する以上の甚だしい差別待遇と謂えるからとの理由で本条を解雇の場合に類推適用する見解を採ったと仮定しても、本条は―信条の意義の広狭を問わず―信条それ自体を理由として解雇する場合に於ける制限たる事明らかである。此の点については既に憲法第十四条の場合について説示したところと同様であるからそれを其のままここに引用する。然るに既に述べた通り現下に於ける日本共産党の一員又は其の同調者であると言う事は、単に共産主義の信条を有すると言うに止まらず憲法其他一切の法令を否認し破壊的な行動目的を持つ強固な組織の一員であり、党の指令に依って直に行動する者或は之に同調する者たる事を意味する。従って新聞事業の如き重要な公共事業を営む私的団体が前認定の如き危険より新聞事業を防衛する為日本共産党員又は其の同調者を職場より排除する事は、信条それ自体を理由とする人格差別的取扱ではなく、強固な日本共産党の組織の破壊的撹乱的行動の危険に対する防衛措置であると謂えるから本条には違反しない。