ID番号 | : | 00016 |
事件名 | : | 解雇無効確認並に賃金支払請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 北陸鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 共産党員もしくはその同調者であることを理由に解雇した事例につき、占領後の段階で、共産主義者であることのみを理由としたもので無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 日本国憲法14条,19条,21条 労働基準法3条 民法90条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど) |
裁判年月日 | : | 1956年2月24日 |
裁判所名 | : | 金沢地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和26年 (ワ) 156 |
裁判結果 | : | 一部認容 一部棄却 |
出典 | : | 労働民例集7巻1号58頁/時報79号17頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 浅井清信・判例評論6号22頁 |
判決理由 | : | 憲法第十四条、第十九条、第二十一条、従ってまた労働基準法第三条、労働協約第六条等に違反し、民法第九十条に該当するとの点について。 日本国憲法第十四条、第十九条、第二十一条に規定する国民の権利は憲法上これを保障せられ、私人間の法律関係については憲法が当然には関与するものではないが、右憲法の各条項によって保障されている権利を不当に侵害するような趣旨の私法関係は民法第九十条に所謂「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗」に反するものとして無効といわなければならない。而して憲法第十四条に所謂「信条」とは宗教上の信仰(宗教的信条)の外に思想上の主義(政治的信条)をも含むと解すべく、従って使用者に於て労働者が共産主義者であるからとの理由で解雇したとすれば法の下の平等を明定した同条の精神に違背するし、また憲法第十九条が「思想の自由」を保障している精神にも違背するといわねばならず、いずれにしても斯る解雇の意思表示は公序良俗に反し無効と解すべきところ被告会社の原告X1に対する解雇は単に同原告が共産主義者であることのみを理由にしたものであること前認定の通りであるから、同原告に対する被告会社の解雇の意思表示は公序良俗に反し無効といわねばならない。然しながら憲法第十四条にいう「信条」はあく迄も内心的な信条をいうものであって、この信条に基づく外部的言動に於て破壊的なものがあるときは最早や同条による保障の限りでないし、また同第十九条に保障する自由も人民の内心の自由のみを対象としていると解するを相当とするところ、原告X2及び同X3は破壊主義的言動をなし、その為に被告会社の企業の円滑な運営を阻害し、また阻害する虞れがあること及び被告会社は右原告らの斯る言動からその企業を防衛する為に右原告らを解雇したものであることは前示認定の通りであるから、この解雇は何ら憲法の右各条の精神に背馳するものではない。 |