ID番号 | : | 00037 |
事件名 | : | 地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 古河鉱業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | レッドパージ下、合意解約に応じなければ解雇するとの通告を受けてなされた合意解約が無効であるとして被告会社の従業員たる地位にあることの確認を求めた事例。(原告のうち一部の者についてのみ請求認容。残りについては請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法3条,2章 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど) 退職 / 合意解約 |
裁判年月日 | : | 1965年4月14日 |
裁判所名 | : | 福岡地直方支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和32年 (ワ) 18 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集16巻2号220頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 秋田成就・ジュリスト391号117頁 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則―均等待遇―信条と均等待遇(レッドパージなど)〕 そこで前認定の整理基準たる共産党員及びその同調者にして事業の正常なる運営を阻害し又は阻害する虞ある者とは、エミース労働課長の談話の趣旨労働省の各府県知事宛の昭和二五年一〇月九日通牒の趣旨法務総裁の談話(昭和二五年一〇月一一日毎日新聞掲載)等を綜合すれば、日本国の重要産業からの赤色分子の排除は、共産党を非合法化する趣旨ではなく、従って共産党員又は共産主義を信奉し又は之を支持すると言うだけの理由で排除さるべきものではなく、その行為又は言動により、企業の正常なる運営を現実に阻害し、又は之を阻害する危険性の客観的に認められることを要し、従業員たる共産党員又はその同調者のなす単なる党活動の如きは、これがその所属する会社の従業員に対し、その作業能率の低下企業に対する非協力、職場秩序の破壊、服務規律の違反、企業に対する中傷誹謗、その他企業の運営に悪影響を及ぼすような煽動的言動をなし、又は自ら前記のような企業阻害行為をなし又はこれをなす虞が客観的に存することの認められない限り、単に党活動をなしたとの理由だけで以て、これを職場から排除することは許されないものと解すべきである。 〔退職―合意解約〕 本件通告書中には条件付合意解約の申し入れと条件付解雇の意思表示とが併存しているけれども、原告等が退職願を提出して合意解約の申し入れを承諾するの方法を選択するに至つた根本的原因は、その背後に退職願の不提出を条件とする解雇の意思表示と言う不動の圧力がのしかかっていたからであり、従って原告等の合意解約の申し入れに対する承諾は、条件付解雇の意思表示と密接不離の相当因果関係にあり、条件付解雇の意思表示が公序良俗に違反し無効であるとするならば、条件付解雇の意思表示の圧力に制せられて止むなく成立した合意解約も又無効と解するが相当である。 本件のように条件付解雇の申し入れと、条件付合意解約の申し入れとが併存する場合ではなくて、単純なる合意解約の申し入れに対し承諾の意思表示をなして成立する世上一般に行われている合意解約、又は整理基準に該当する行為がある為一方的に解雇することもできるが、当事者双方円満なる解決を期して一応任意退職を勧告し、之に応じなければ一方的に解雇する旨の条件付合意解約の申し入れと、条件付解雇の意思表示とが併存し且、条件付解雇の意思表示が公序良俗に反しない為合意契約が有効に成立した場合に、数年後になって合意解約の効力を争い解雇の無効を主張することは被告主張の如く信義誠実の原則に違反する行為と認むべきであるけれども、五名の原告等との間に於ける合意解約は、前説示の如く、条件付解雇の意思表示が公序良俗に違反し従ってこれと密接不離の相当因果関係の下に一体としてなされた合意解約も無効であるから、右合意解約は当初に遡り成立しなかったものであり、従ってその無効を主張して提訴することは何等信義誠実の原則に背反するものではない。 |