ID番号 | : | 00039 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 三洋電機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 転勤異動命令を拒否したことを理由に譴責出勤停止処分を経て懲戒解雇された申請人が、解雇の無効を主張して地位保全と賃金支払の仮処分を申請した事例。(認容) |
参照法条 | : | 労働基準法3条,2章,89条1項9号 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど) 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1967年2月6日 |
裁判所名 | : | 札幌地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和40年 (ヨ) 464 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集18巻1号52頁/時報487号58頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則―均等待遇―信条と均等待遇(レッドパージなど)〕 被申請会社は右A発足の一ケ月後である七月三一日に、技術経験ともに未熟である申請人Xに対し、右Aの責任者として充分その任に耐えうるよう無線関係の技術につき研修の機会を与えるというような準備段階を何等経ることなく、突然従来進行していたBとCの人事交流計画を変更して、僅か一週間後八月七日よりDに勤務するよう命じたわけであり、右転勤命令は、およそ申請人Xの能力、適性を無視したものであって、業務上の必要性に基くものとはいい難い。 他方、申請人Xにとって、Dは一人勤務制であるから、サークル活動をするにもBに比し種々の不便があるであろうことは容易に予測されるところである。右認定の諸事情に、前記第一、二項に協定した申請人Xの活動およびこれに対する被申請会社の態度に関する諸事実を綜合すれば、申請人Xに対する本件転勤命令は、同人の共産主義思想および政治活動を嫌悪して発せられたものというべきである。従って、右転勤命令は、申請人Xの信条を理由としてその労働条件につき差別的取扱いをするものであるから、労働基準法第三条に違反し無効と認めるのが相当である。 〔配転・出向・転籍・派遣―配転命令権の濫用〕 施設の維持につき何等具体的な必要も認められないのに、申請人等の留守中に無断で寮の申請人等の私室に立入った前記EおよびFの行為はいかに被申請会社の寮であるとはいえ、申請人等の住居の平穏および私生活の自由に対する違法な侵害行為であると解すべきであり、右侵害に対し抗議した申請人等の行為は正当であり、右抗議に対する報復としてなされた前記異動命令は、権利の濫用として無効であるといわざるを得ない。 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕 申請人等に対する本件異動命令がいずれも無効であること前記のとおりであるから、申請人等が右命令に従わなかったことをもって違法であるとはいいえず、右命令に従わなかったことを理由とする本件懲戒解雇は、いずれも労働協約第一八条第一項第一号所定の「労働協約および会社諸規定を犯し、注意を加えても従わない時」に該当しないものと解するのが相当である。そうすれば、申請人両名に対する本件懲戒解雇の意思表示はいずれも無効であるというべきである。 |