ID番号 | : | 00043 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 小太郎漢方製薬事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 系列会社へ代表取締役として出向していた従業員が、出向先の代表取締役を辞任すべき旨の命令を拒否したことが出向元会社の就業規則所定の懲戒事由にあたるとして解雇されたのに対し、右解雇は思想、信条を理由とし無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請認容) |
参照法条 | : | 労働基準法3条 民法625条1項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど) 配転・出向・転籍・派遣 / 復帰命令 |
裁判年月日 | : | 1970年10月22日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ヨ) 443 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集21巻5号1381頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則―均等待遇―信条と均等待遇(レッドパージなど)〕 本社が申請人に対しA会社の代表取締役の辞任を命じた理由は既に認定のとおり申請人がA会社の代表取締役として積極的な拡張政策を採ることによって一時的であるにせよ月々赤字を計上したこと、そして本社役員との間に意思の疎通を欠き協力関係に障害を生じたことにあることは事実であるとしても、右はいわば口実にすぎないのであって、その決定的理由は申請人が日本共産党に所属して本社からの脱党要求に応じなかったことにあるものというべく、しかもたとえ申請人において右要求に応じなかったとしても本社の存立に対して明白かつ現在の具体的危険が発生する余地は一応なかったものと認めることができるのであるから、本社が申請人に対してなした前記命令は申請人の政治的信条自体を理由とするもので憲法第一四条、労働基準法第三条に違反して無効のものであり、右無効な命令違反を結局の理由とする本件解雇もまた無効というべきである。 〔配転・出向・転籍・派遣―復帰命令〕 元来勤務の具体的内容および勤務場所を特定して雇用契約を締結した場合を除いて被用者はこれらの指定についての権限を包括的に使用者に与えているものと解することができるのであるが、その場合においても使用者は右権限を無制限に行使できるものではなく、もしその行使が濫用に亘るような場合にはそれは無効であって、被用者においてこれに従う義務を負わないものと解する。そしてこのことはいわゆる在籍出向の場合においても異るところはない。右出向の場合被用者は使用者との間の雇用契約を存続させながら労務の提供場所を出向先に変更し、または右雇用契約の効力を一時停止してその間出向先の使用者との間に雇用契約を締結するものであるが、いずれにしても出向元の使用者との間の雇用契約は存続しているのであるから、右出向が雇用契約によって許されるものである以上、右出向およびこれをとりやめて出向元に復帰を命ずる権限はその行使が濫用に亘らない限度において使用者に与えられているものと解すべきであるからである。 (中 略) これを本件についてみるに、本社は申請人に対しA会社の代表取締役を辞任するように命じたのであるが、もともと本社は申請人に対しA会社の代表取締役への出向を命じたものであるから、右辞任命令は、他に本社の従業員としての地位を解雇する旨の意思表示を伴わない以上、本社への復帰命令と同一のものと解することができる。 (中 略) 申請人はA会社の代表取締役として出向していたものであり、代表取締役である以上、通常の従業員とは異って一応広範な権限を与えられて経営の衝に当っていたものであるから、右代表取締役としての適格性については多面的な評価を受け、しかもその職務の性質からして極めて心情的な評価にも甘じなければならないものと解する。してみると本社がA会社の代表取締役としての申請人について特段経営上の過誤はないにしても、その経営方針について同調できず、しかも心情的に申請人との協調関係を維持できないものとの判断に到達したものとすれば、それだけの事由で申請人に対しA会社への出向をとりやめ得べきものと解する。 (中 略) してみると、申請人において右命令を拒否した以上、申請人についてはA会社の代表取締役として出向した本社の従業員として前記就業規則第六九条第四号に該当する行為があったものと認めることができる。 |