全 情 報

ID番号 00050
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本スピンドル製造事件
争点
事案概要  期間六ケ月で雇用された臨時工が、期間満了後も引続き雇用された後、人員整理の対象として解雇されたので、雇用契約上の地位保全、賃金仮払等の仮処分を申請した事例。(申請却下)
参照法条 労働基準法3条,89条1項3号
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 社会的身分と均等待遇
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1973年3月30日
裁判所名 神戸地尼崎支
裁判形式 判決
事件番号 昭和46年 (ヨ) 247 
裁判結果 却下
出典 労働判例179号61頁
審級関係
評釈論文 秋田成就・ジュリスト562号103頁
判決理由  〔労基法の基本原則―均等待遇―社会的身分と均等待遇〕
 臨時工である申請人には六ケ月という期間の定めがあり、本工については期間の定めがないことは、前判示のとおりである。その点において臨時工と本工の労働条件には差異がある。しかし、右の差異は労働契約の内容の相違によるものであって、社会的身分による差別とはいえないから、本件臨時工契約が憲法一四条、労働基準法三条に違反するものでないことは明らかである。そして、本件臨時工契約そのものについては、それが被申請人会社の存立維持の必要からなされた点に鑑み、是認しうるものであることも、すでに判示したとおりである。したがって、本件臨時工契約は、もとより有効であり、被申請人は、これら臨時工を対象とした就業規則を適法に定め得るものと解される。
 〔解雇―整理解雇―整理解雇基準〕
 前示認定のとおり、臨時工の雇用契約には六ケ月の期間の定めがあり、そのため会社が不況期に臨時工を整理する場合は、その期間満了を待って整理する、すなわち雇用契約を更新しないという方法によって人員削減を行なって来たのが従前の例であることを考えると、右の「業務上の都合によりやむを得ないとき」とは、単に会社の業績が悪化して人員整理の必要があるというだけでは足りず、会社が臨時工契約の期間満了以前に解雇しなければならない程度の緊急事態に立ち至った場合のみをいうものと解するのが相当である。
 そこで本件についてこれをみるに、前判示のとおり人員整理の必要性は一応認められるものの、人員整理を必要としたいわゆる三六億円のペイライン体制の確立は、四六期中(昭和四六年一〇月ないし四七年三月末)に達成する予定とされていたこと、およびその四六期の前半の昭和四六年一一月九日に早くも申請人の雇用契約期間が満了すること等から判断すると、同満了より僅か二ケ月余以前の同年九月に申請人を解雇せねばならぬ程の緊急事態が生じていたとは考えられず、同期間の満了を待ったうえ、契約を拒絶するという方法を採ることによっても、会社の意図は充分達成し得たものと解される。したがって、本件解雇は臨時従業員就業規則三四条二号の要件を満しておらず、その適用を誤ったものであり、これを無効と解するほかない。