全 情 報

ID番号 00083
事件名 賃金等請求事件
いわゆる事件名 太洋工芸社事件
争点
事案概要  契約金名義の報酬を得て建物、施設のデザイン等行っていたデザイナーが、会社による契約打ち切りに対し、右契約は雇用契約であり右打ち切りは解雇にあたるとして、未払賃金に加えて解雇予告手当等の支払を求めた事例。(自動車の減価償却費以外認容)
参照法条 民法623条,632条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
裁判年月日 1969年9月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ワ) 858 
裁判結果
出典 労働判例88号25頁
審級関係
評釈論文
判決理由  本件契約締結のいきさつ、その契約内容、原告らの被告会社における勤務条件および勤務の実態、契約金支払いの実態等を総合すれば、本件契約の実質は原告らが被告会社にその受注した建物、施設等の内装および外装工事の企画、設計、デザインに関し労務を提供し、これに対し被告会社が原告らにその報酬として契約金名義で賃金を支払うことを約した雇傭契約であると解するのが相当である。
 (中 略)
 原告らに対する契約金は毎月「諸手当」という項目で支払われ、所得税の源泉徴収も給与所得に対する税率ではなく報酬に対する税率の一〇パーセントを適用されていたことが認められ、これによれば本件契約が請負契約であることを推認しうるかのようであるが、しかし、また、証人Aの証言によれば被告会社の社員はすべてその給与を「諸手当」という項目で支払われていたことおよび社員である同人の給与に対する所得税の源泉徴収も原告らと同様に報酬に対する税率である一〇パーセントが適用されていたことが認められるから、結局右事実も前記認定を妨げるものではない。
 (中 略)
 原告X1は被告会社に入社前に勤務していたB株式会社においても本俸だけでも金一五万円という社長の報酬よりも高額の給与の支給を受けていたことが認められるし、また、右証言と原告X2本人尋問の結果によれば原告らの職種はデザイナーという特殊の職種であり、その技量も前記の契約金に相当するものを有していたことが認められ(被告会社代表者本人尋問の結果中右認定に反する部分は信用しない)、右認定の事実をもってすれば被告の右主張も本件契約が雇傭契約であるとの前記認定を左右するには足りない。
 (中 略)
 右認定の事実に照らせば契約書作成の経緯についての被告の主張は失当であり、また、契約書の文言についての被告の主張も本件契約が雇傭契約であるとの前記認定を覆えすに足りない。