全 情 報

ID番号 00085
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 下関魚市場事件
争点
事案概要  魚市場に隣接する岩壁で旋網組合の組合員が捕獲陸揚する鮮魚の選別作業に従事している作業員らが、労働組合を結成し待遇改善を要求するストライキを行った後、その就労を拒否されたので、雇用契約上の地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請一部認容)
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
裁判年月日 1972年7月17日
裁判所名 山口地下関支
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ヨ) 91 
昭和45年 (ヨ) 92 
昭和45年 (ヨ) 103 
裁判結果 一部認容
出典 労働民例集23巻4号455頁
審級関係
評釈論文 渡辺章・ジュリスト539号119頁
判決理由  選別作業契約の内容につき考えてみるに、前記認定の事実によると、債権者ら選別作業員の採用に当り各相手方債務者との間で一般の従業員の場合のごとき明確な雇用契約が締結されたわけではなく、また選別作業員に対する就業規則も作成されていないけれども、債権者ら選別作業員はその身元を確認されたうえ名簿により各専属債務者に登録され前記内容の身分証明書の交付を受け、毎日の作業時間は午前零時から午後四時までと定められ、その出欠は債務者らにより毎日確認され、債務者らの定めた前記作業形成に従いその監視のもとに作業を進め、割り当てられた作業を拒否することは許されず、かつ右作業時間は実働時間でないにしろ時間中は原則として職場に留まり債務者らの営業に即応できる勤務態勢をとることを要請され、作業に必要な選別台、作業用手袋のほか作業員詰所の維持管理に要する費用一切はそれぞれ債務者らの責任において支弁されるほか、選別作業の対価は前記最低賃金保障制度の実施以後すべて賃金という形で満勤者に対し月額一八、〇〇〇円が保障され、少額ながら夏期・冬期の賞与も支給され、各種社会保険の取扱いがなされ賃金からの源泉徴収等は債務者らの他の従業員と同一に取り扱われているのであるから、これらの各事情を考えあわせると、債務者らと各専属債権者らとの間には少なくとも前記最低賃金保障制度実施以後において、法理論上雇用契約の要素とされる支配従属関係が生じたものであり、右賃金の支払いは選別作業労務の給付そのものに対してなされ、またそれは一部生活給的要素をも包含するものと認めるべきである。
 以上を要するに、少なくとも前記最低賃金保障制度が実施された昭和四四年四月一日以後においては、各債務者側の認識はどうであれ、事実関係を客観的・実質的に観察するかぎり、債務者Y1市場と第一債権者らの間、債務者Y2市場と第二債権者らの間に、それぞれ最低保障付出来高払制賃金による雇用契約(労働基準法二七条参照)が存在し、債権者らはいずれも労働基準法、労働組合法等の保護を受ける労働者であると認めるのが相当である。