ID番号 | : | 00086 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大塚印刷事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 基準単価に基づく出来高払制で筆耕料を支払われていた非専属の筆耕者が、被告会社からの仕事の割当を止められたので、雇用契約上の権利を有することの確認、賃金の支払を請求した事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法9条 民法623条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 労働者の概念 |
裁判年月日 | : | 1973年2月6日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (ワ) 9683 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報807号5頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 一般に、ある労務供給に関する契約が雇用契約かあるいは請負契約ないし準委任契約かは、契約の形式にとらわれず、当該契約当事者間に労働提供について実質上使用従属関係があるか否か、換言すれば使用者の指揮監督の下に労務提供がなされ、一般的な指揮監督下に組み込まれていると評価しうるか否かについて判断して決しなければならない。具体的には、使用従属関係の徴表と考えられる次の諸点、(1)仕事の依頼、業務従事に対する諾否の自由の有無、(2)時間的場所的拘束性の有無―勤務時間(始業および終業時の定め)勤務場所の指定、(3)業務内容が使用者において定められ、業務遂行過程における使用者の一般的な指揮監督関係の有無、服務規律の適用、(4)労務提供の代替性の有無、(5)業務用器具の負担関係、(6)報酬が労働自体の対償的性格を有するか否か―生活保障給的要素、労働の質に対する較差、欠勤控除、超勤手当等の有無、付随的に給与所得税等の源泉徴収の有無、さらに退職金制度の存否等を考慮すべきである。 本件の場合、まず第一期(昭和四一年八月頃から昭和四三年一〇月頃まで)の原、被告間の筆耕に関する契約関係の法的性質は、前記認定のような契約内容、原告の業務従事の状況等から考えると、原、被告間に右述の使用従属関係があったとは到底認めがたく、原告主張のように臨時雇たる雇用契約とは認められない。むしろ、請負契約ないし準委任契約の関係であったと認めるほかはない。 すなわち、勤務時間、勤務場所の定めは全くなく、とくに拘束時間というものはないし(仕事の納期の関係で、被告会社で徹夜作業をすることもあったにしろ、それはとくに被告の指揮命令下になされたわけではなく、またかかる時間的制約は請負等の契約の下でもみられるところで、拘束された勤務時間とは質的に区別されなければならない。)、被告からの仕事の依頼について諾否は自由であり、他社の仕事をやることについてなんらの制約もなく、原告が仕事の依頼を承諾した場合に、自宅等で自由に作業し、納期までに仕上げればよいというにすぎず、現に右期間中原告の仕事量は全く不定で、相当期間被告の依頼を断って全く仕事をしなかったこともあったこと前認定のとおりであり、被告の一般的な指揮監督下に組み込まれて労務を提供していたとは到底認めることはできない。しかして、それに対応して、筆耕料の支払も、筆耕契約者一率に(専属の者については固定給等の定はあったが)基準単価を定めた上での出来高払制がとられ、これについて月額の最低保証金額や時間外勤務手当、さらに退職金等の定めもなく、給与所得に対する所得税等の源泉徴収もなされておらず、雇用関係にあるタイピスト等の従業員の労働条件とは、截然区別されていたことは前認定のとおりであるからである。 2 次に、本件で問題の、昭和四三年一一月以降における原、被告間の契約関係についてみるに、前記認定のような契約内容、原告の業務従事の状況等諸般の事情から判断すると、第一期の契約関係とは質的に異なり、雇用契約であると認めることはやはり困難といわざるをえない。 |