ID番号 | : | 00088 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本瓦斯事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | ガス料金の集金業務に従事するガス会社の集金人が集金人契約の解約を通告されたので、従業員としての地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法9条 民法623条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / ガス料金集金人 解雇(民事) / 解雇事由 / 不正行為 |
裁判年月日 | : | 1973年8月8日 |
裁判所名 | : | 鹿児島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ヨ) 112 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 時報721号96頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 岩出誠・ジュリスト576号139頁 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則―労働者―ガス料金集金人〕 被申請人は、被申請人と申請人との契約関係は委託契約関係であるから、申請人は被申請人の労基法にいう労働者ではなかったと主張し、本件集金人契約の契約条項において、「被申請人は申請人に集金業務を委託し、申請人はこれを受託する」という文言が使用されていることは前記認定のとおりである。しかしながら、契約の法的性質は契約のうちの一条項に用いられた文言によって決まるものではなく、契約条項全部、およびその履行の実態を合わせた契約関係の全体によって決まるものであり、かついわゆる混合契約、無名契約等といわれる実定法の典型契約に該当しないものがあることはいうまでもないことであり、他方、労基法第九条は、事業主との契約関係が民法上の雇傭であることを同法上の労働者たる要件としてはおらず、事業主に使用される者で、その労働に対する対価の支払いを受ける者をもって労働者としているのであるから、労基法上の労働者であるか否かは、結局は事業主に「使用される者」といえるか否か、換言すれば、その労務の給付を事業主の指揮監督に従って行っている者といえるか否かによって決められるべきものということができる。ところで、前記認定事実によると、本件集金人契約は、その契約条項において、申請人が集金業務処理に関する一切の行為を善良なる管理者の注意をもって処理すべきことが定められているほかに、申請人は集金業務の取扱い、および服務についてすべて被申請人の指示に従うべきこと、すなわち、申請人が集金業務の労務を給付するについては、事業主である被申請人の指揮監督に従うべきことが定められており、その履行の実態においても、労務に対する報酬である手数料の額に直接影響を及ぼすことはないけれども、一般の休日以外は出社、退社の時刻が定められていて、遅刻、早退の取扱いが行われていたこともあり、平日に全く集金業務を行わない場合には、他人が代って集金業務を行う必要の有無にかかわらず休務届を提出することになっており、また集金した料金の保管、納入方法も被申請人の定めた一定の方法によって行うことになっている等、申請人がその労務の給付について自主的に決定し得る範囲は、当該の日の集金先をどこにするか(但し、この点についても、原則として早収料金期間内に集金を行わなければならないことと、被申請人から申請人に対する領収証の交付日とによって、おのずから或る程度の制約が加わる)、その集金順序をどのようにするか、集金先を回るための交通用具、機関の使用方法等極めて限られた範囲に過ぎないもので、被申請人の指揮監督を受ける程度、範囲が、申請人が自主的に決定し得る程度、範囲よりもむしろ大きかったということができる。してみると、申請人は事業主である被申請人の労基法にいう労働者の地位にあったものというべきである。 〔解雇―解雇事由―不正行為〕 右(二)ないし(四)に認定、判断したところによると、本件解雇をもって解雇権の濫用であって無効であるという申請人の主張は採用できず、前記認定の本件集金人契約の契約条項(6)の2に定められた解約事由があり、労働基準法第二〇条、および右契約条項の(7)所定の予告期間をもってなされた本件解雇は有効なものと解するのが相当である。 |