全 情 報

ID番号 00094
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 近畿放送事件
争点
事案概要  テレビ放送番組の制作等を業務とする会社との間に雇用契約を締結している労働者らは当該会社と放送会社である被申請人との間の請負契約により、被申請人会社に派遣され各業務に従事していたが、請負契約が解除され就労を禁止されたので、被申請人会社の従業員としての地位保全等の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法9条
職業安定法44条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 派遣労働者・社外工
裁判年月日 1976年5月10日
裁判所名 京都地
裁判形式 決定
事件番号 昭和51年 (ヨ) 132 
裁判結果 認容
出典 労働判例252号17頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労基法の基本原則―労働者―派遣労働者・社外工〕
 以上の事実に照らすと、A会社の前記近畿事業所なるものは事業所たる実体を有せず、申請人らは被申請人会社の職制等の指揮監督のもとに労務を提供していたことが明らかで、申請人らと被申請人会社との間には使用従属関係が存在し、又申請人らの行う業務は被申請人会社の社員によっていつでも代替できる内容のものであり、請負代金の名目でA会社に支払われているものも実は一定の仕事に対する報酬ではなく申請人らの労務の提供と対価的牽連性を有し実質は賃金とみるべきものであるから、被申請人会社とA会社との間の請負契約は請負契約ではなく、職業安定法四四条の禁ずる労務供給契約にほかならないというべきであって無効であるといわなければならない。
 そして、これに加え使用従属関係の存在と前記7の事実及び名目が請負代金で当事者の法的評価が何辺にあるにせよ、申請人らの労務の提供に対する報酬の支払とみるべき実態が存することに鑑みれば、たとえ被申請人会社において請負契約なる外装を捨てる意思がなかったとしても、すくなくとも右契約が外装に過ぎないとの認識はあったと認めるのが相当であり、そうだとすると申請人らと被申請人会社との間には遅くも前記団体交渉申入れのころまでに申請人らの提供する労働に客観的に見合う金額を賃金とする黙示の雇用契約が成立していたものとみるのが相当である。
 〔労基法の基本原則―労働者―派遣労働者・社外工〕
 しかして、右のように申請人らと被申請人会社との間に雇用契約関係が存する以上、被申請人会社が請負契約を解除し前記7の事実のように申請人らの意思に反して同社内での就労を拒否することは申請人らに対する解雇の意思表示とみなければならない。
 しかるところ、前記1の事実の右契約解除の理由では、右解雇に正当事由があるということはできないし、その他正当な解雇事由は見当らないから、右解雇は権利の濫用であって無効であるといわなければならない。
 そうすると、申請人らは、被申請人会社の従業員たる地位を有するものというべきである。