全 情 報

ID番号 00096
事件名 従業員地位等仮処分申請事件
いわゆる事件名 青森放送事件
争点
事案概要  清掃や建物管理等を業務とする下請会社から放送会社へ派遣され、テレビ放送のコマーシャルフィルムの編集作業に従事していた労働者が、下請会社と放送会社との間の請負契約の解除およびこれに伴う下請会社による解雇に際し、放送会社の従業員としての地位を仮に定めることを求めた事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 派遣労働者・社外工
裁判年月日 1978年2月14日
裁判所名 青森地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ヨ) 114 
裁判結果 認容
出典 労働民例集29巻1号75頁/時報916号99頁/労働判例292号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由  1 債務者会社と債権者との間に明示の労働契約が締結されたと認めることはできない。
 しかし債権者の提供する労務は、その内容において機械的で単純な作業ではあるが、債務者会社にとってはその営む放送事業の遂行上必要不可欠なものとして恒常的に確保する必要があり、また右労務の性質上、放送に向けられた一連の作業の一環としてそれに直結しているため、その企業組織に有機的に組み入れられて運用する必要があるものである。そして現に債権者は、債務者会社の構内施設においてその所有の設備資材等の一切を使用し、かつ出退勤、休憩時間、休暇等は債務者会社の職場規律に従い、債務者会社職制の指揮監督の下に拘束を受けて、直接債務者会社に対し労務を提供し、債務者会社がこれを受領していて、両者間には使用従属関係を本体とする事実上の労働関係が成立していること、そして債権者は右のようにして債務者会社に向けられた労務の提供に対し賃金を支払われていたことが認められる。
 以上のような事実関係の下においては、なお社会通念上債権者と債務者会社との間に労働契約が成立することを妨げると認められる特段の事情がない限り、両者間には少なくとも暗黙のうちに意思の合致による労働契約が成立しているものといちおう認むべきである。
 (中 略)
 債務者会社とA会社との間の本件請負契約やこれに基づき債権者がA会社の従業員として派遣されるという形式は名目に過ぎず、かかる形式が存するからといって、債務者会社と債権者との間の労働契約の成立をくつがえすことはできず、他に右契約の成立を妨げるべき事実を肯認することができない。