全 情 報

ID番号 00099
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 新日本ジュエル・ギャラリー事件
争点
事案概要  画廊において美術品の仕入れ及び販売の業務に従事し、日常業務についてかなりの裁量権を与えられていた者が、その業務従事は共同経営者としての行為であるとして無収益を理由に利益の分配を拒んでいる画廊経営者に対し、賃金の支払を求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法9条,10条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 共同経営者
裁判年月日 1978年12月25日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 699 
裁判結果 認容
出典 労経速報1007号21頁
審級関係
評釈論文
判決理由  原告は、右仕入及び販売については、少額のものは自己の裁量により金額を決定したが、百万円単位のものは、被告代表者がA株式会社のために同一階に出勤して来ているので、同人に相談の上その金額を決定した。原告のほかに被告のために働く社員はいなかったが、取引に際して伝票を作成する事務員は、原告が被告代表者に断った上、臨時雇として採用された。帳簿及び決算書類は、右の伝票に基づいて、被告代表者の依頼を受けたB会計事務所において作成され、原告は、被告の営業上の利益計上、利益配分等経理関係には全く関与していなかった。手形、小切手類は、A株式会社の経理担当者が用紙と印鑑を保管し、美術品の代金の支払や宣伝広告費の支払の必要が生じたときは、原告の要請に基づいて被告代表者の指示により右担当者が振出していた。また、銀行預金の通帳も右担当者が保管していた。原告は、出勤簿に押印したり、タイム・カードに打刻したりすることはなかったが、出張で不在の場合を除き、おおむね午前一〇時から午後六時まで画廊に勤務していた。
 (中 略)
 また、原本の存在及び原告の署名部分に争いがないので真正に成立したものと推定できる(書証略)によれば、原告は、昭和四八年五月頃、振出人を「CギャラリーD」と記載して額面七九〇万円の約束手形を振出したことが認められるが、原告本人尋問の結果によれば、右は、被告に絵画の販売を委託したEが預り証だけで絵画の引渡をすることには納得せず、約束手形の交付をも求めたため、原告がこれに応じて記載したものであることが認められるので、前記認定を左右しえないものである。
 他に前記認定を覆えすに足りる証拠はない
 前記認定の事実によれば、原告の担当職務の範囲は広く、被告代表者から相当広汎な裁量権を与えられており、勤務条件もゆるやかなものであったといえるが、被告の経営上の意思決定は被告代表者の判断に委ねられているので、原告が被告代表者と共同経営にあたっていたものと解することは困難であり、原告は、被告代表者の包括的な指揮命令権の下にあって、被告に雇傭されていたものと解するのが相当である。
 (中 略)
 三(書証・人証略)によれば、原告は、昭和四九年四月三〇日限り、原被告間の合意により被告を退職したことが認められ、右認定に反する証拠はない。
 四 以上の事実によれば、原告の請求は理由があるから、これを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を、仮執行の宣言について同法第一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。