ID番号 | : | 00104 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 藤井組事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 建設工事下請人の代金持ち逃げにより賃金を受領できなかった下請労働者らが、元請企業に対し、直接的労働契約関係の存在ないし元請企業が下請人の使用者であることを理由に、右未払賃金ないし未払賃金相当額の損害賠償の支払を求めた事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法10条 民法415条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 派遣労働者・社外工 |
裁判年月日 | : | 1983年1月25日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和54年 (ワ) 3135 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例403号46頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 労働者の供給を受ける者と労働者を供給する者との間に形式上請負契約が締結されていても、労働者の供給を受ける者が労働者の採否や賃金額等の労働条件を直接決定し、あるいは労働者に対する指揮監督を直接行使しているといえるようなとき、または、本来労働者の供給を受ける者が行うべき労働者の募集、賃金の決定、支払、労務管理を労働者を供給する者が代行し、ないし、労働者の供給を受ける者の職制的立場にあるといえるような場合は、当該労働者とその供給を受ける者との間に直接の労働契約を締結する黙示的な意思表示がなされたものと推認することができよう。 しかし、本件においては、前記1(一)、(二)及び(四)ないし(九)で認定した事実によれば、被告としては、A工務店を実質的な当事者として本件仮枠工事に関する請負契約を締結したものであり、また、被告は、選定者らの供給について、その採否や員数、報酬等の条件を決定する立場になかったし、現実にその決定に何ら関与しておらず、却って、選定者らの報酬額等は、BとC、D会社の代理人ないし選定者らの代表者的立場にあった原告との間で独自に決定され、報酬の支払いもBの計算で同人から原告の手を経て選定者らに支払われていたし、選定者らに対する労務管理や作業上の指示監督についても、専らBないしD会社の代理人的立場にあった原告がなしていたものである。そうすると、右のとおりA工務店が本件仮枠工事請負契約に関しては独立した企業としての実体を備えていたとは言い難いとしても、被告が選定者らの供給を受けるについて、Bが、選定者ら労働者の募集、報酬の決定、支払、労務管理等を被告に代行し、あるいは被告の職制的立場に立ってこれをなしていたともいえない。却って、A工務店と選定者らとの間には、D会社を介して選定者らが本件工事現場において就労し、A工務店がこれに対して報酬を支払うことを内容とする契約が存在し、選定者らは、A工務店に対する右の義務に基づいて本件工事現場において就労していたものと解せられる。 従って、前記のようなA工務店、Dの実態及びA工務店と被告との間の請負契約の実態があっても、本件のような場合は、選定者らと被告との間に直接の労働契約を成立させる黙示的な意思表示があったものと認めることはできない。 |