全 情 報

ID番号 00120
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 枚方市事件
争点
事案概要  市立学校の警備員で組織する警備組合と市との間の警備委託契約を契約期限満了後更新しない旨の市の通告に対して、警備員らが雇用契約上の地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請却下)
参照法条 労働基準法9条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約
裁判年月日 1972年4月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ヨ) 2082 
裁判結果 却下
出典 労働民例集23巻2号278頁
審級関係
評釈論文
判決理由  右の各事実によれば、昭和四三年七月三〇日警備組合発足の当初はその組合員とされている人達の意思に基づくというよりは被申請人なり市教委の指導により組合契約書に署名したが、その後組合としての活動を続けて行く間に組合員の脱退加入により構成員に変動があり、それらの脱退、加入は被申請人の意思、意向とは無関係に組合員らの了解のもとになされ、新加入者は脱退者と同様学校園の警備に従事するという労務を提供して、警備組合という団体としての同一性を維持し、組合契約および規約に基き組合員の意思を統一するための機関としての総会および組合の対外的業務の執行に当る代表組合員を選定し、かつ、組合の事務処理のため事務員を雇用していること、本件委託契約による警備対象施設二五箇所中数施設については二人一組になって警備に従事し、組合員も多いときには三八名位いたがその場合においても委託料は警備施設二五箇所を基準に定められており、警備要員の欠員補充、交替員の手当等はすべて警備組合の責任によって行われ、警備対象施設に組合員の誰を配備し、また何人で警備させるか等労働力の配置編成権限についても、被申請人に関係なく警備組合がこれを有していたのであるから、警備組合は社会的に実在する一箇の独立性ある団体として活動していたものと認められる。そして、警備組合内部においては個々の組合員が学校園等の警備に必要な労務を提供することを約し、警備組合が被申請人の設置した学校園についてその警備という事務の委託を一括して専属的に引き受ける事業を営むことを目的として、警備組合の代表組合員と被申請人との間に前認定の本件委託契約が締結されたものと認めるのが相当である。
 そうすると、警備組合は比較的社団的色彩が濃いけれども、その団体組織は構成員相互の間の権利義務として構成される民法上の組合であり、組合の債務はその組合員全員に帰属することになるので、各組合員個人と被申請人との関係のみを抽出し、前示認定の組合員の警備の実体を併せ考えると右関係は被申請人と警備員の雇用関係と類似した関係とみられるような面もないではないが、各組合員は負担する債務の内容はその組合員が現に警備に従事している施設のみを対象としたものではなく、本件委託契約の対象となった二五箇所の施設全体を対象とするものであり、したがって、右のうち一箇所でも警備を怠ることがあれば何ら懈怠のない組合員も債務不履行の責任を怠れないことになり、使用者と被用者との間の権利関係のみに尽きる雇用関係とは権利義務の内容を異にするといわざるを得ない。