全 情 報

ID番号 00126
事件名 地位確認請求事件
いわゆる事件名 加納鉄鋼事件
争点
事案概要  営業部長職、さらに研究開発部長職を担当した取締役が、任期満了の後の五ケ月間、参与の地位に就いたが、これ以後の労務の提供を拒絶されたので、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認、賃金の支払を請求した事例。(請求、棄却)
参照法条 労働基準法11条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役
裁判年月日 1975年9月22日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 477 
裁判結果 棄却
出典 労経速報894号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労基法の基本原則―労働者―取締役・監査役〕
 前認定のとおり被告会社においては従業員が取締役に就任する場合には一旦従業員を退職する取扱いになっており原告においてもこれを十分知り得べきであったのであるから、原告が取締役就任方を受諾するにあたっては、取締役に就任することにより取得し得べき待遇上、権限上その他の諸利益及び従前よりの従業員の地位を失うことの不利益と取締役就任の申出を辞退することから生じ得べき不利益及び従前の従業員の地位に留まることにより受ける利益とをそれぞれ比較考量のうえ自らの責任で決断すべきものというべきであり、一旦取締役就任方を異議なく受諾したものであるからには、それまでの従業員たる地位の喪失をもあわせて承諾したものと解するのほかはない。
 右認定の事実によれば、被告会社においては使用人兼務取締役の使用人たる地位が取締役たらざる従業員の地位と制度的に別異のものとして規律されていたことが明らかであって、使用人兼務取締役たる者も取締役会の構成員として会社の意思決定に参画する者であることに照らせば、原告が取締役在任中に営業部長・研究開発部長の職務を行なううえで兼務していた商業使用人たる地位は、原告が取締役の地位にあることを当然の前提としてなされる各職務の委嘱を原告において受諾したことによって創設的に取得されたものであり、それ故前提である取締役の地位を失うならば、商業使用人たる地位をも当然に失う関係にあるのであるから、原告が取締役在任中に有していた使用人たる地位は取締役就任前に有していた従業員たる地位とは全く別異のものであり、その継続するものと解するのは相当ではない。