全 情 報

ID番号 00132
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 東販事件
争点
事案概要  マネキン派遣会社設立に関して、職安職員、東京都労働局長らのとった行為により、いったん設立した会社を解散せざるを得なくなったとして、これによりこうむった損害の賠償を国、東京都等に求めた事例。
参照法条 職業安定法44条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 派遣労働者・社外工
労基法の基本原則(民事) / 使用者 / 派遣先会社
裁判年月日 1981年2月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ワ) 11083 
裁判結果 棄却
出典 時報1013号51頁/タイムズ443号91頁/労働判例375号90頁/訟務月報27巻9号1585頁/労経速報1109号20頁
審級関係
評釈論文
判決理由  職業安定法四四条で規定する、労働者供給事業禁止の趣旨は、次のように理解すべきである。すなわち、労働者供給事業とその労働者の供給を受ける者との間で締結される契約の型式が、労務そのものを供給することを目的とするのではなく、仕事の完成のためにする目的をもってする労務を提供するという、いわゆる請負契約である場合や、あるいは請負契約とその他の契約の複合せるいわゆる複合契約である場合とを問わず、その契約の実態が、労働力の供給、すなわち、労働力を一時的にせよ他人の使用に供することにあると認められる場合には、その事業は、労働者供給事業に該当するとして、これを排斥しなければならないことを定めている趣旨というべきである。
 この点を踏まえて、行政組織の内部規律である職業安定法施行規則をみると、同規則四条では、同法五条に規定する職業紹介等に関する事項を定めており、その規定は、右の同法の趣旨を具現化した解釈規定として、十分に合理的であると解することができる。
 他方、これに対し、原告は、訴外A会社の計画している事業内容は、マネキンの派遣先である百貨店やスーパーストアー等との契約は請負型式によるものであることを強調するものの、昭和五〇年三月三日にB係長と面談した当時においては、未だ派遣先における訴外A会社のマネキンについての労務管理や指揮監督の方法を具体化できない状態である旨述べており、そのことは、同法施行規則四条一項二号にいう「作業に従事する労働者を指揮監督するものであること」との要件を欠くおそれが多分にあったと推認することができる。また、原告は、訴外A会社の事業内容として、派遣先企業の取り扱う商品の宣伝販売について、その企画から宣伝、販売までを、訴外A会社において一貫して行うとしているが、右業務が脱法的でないと言い得るためには、その業務内容のうち、マネキン派遣以外のその他の部分の業務が単なる付随業務や単純作業ではなく、相当高度の専門性を有する業務でなければならず、同法施行規則四条一項四号もその趣旨を明言しているところ、原告の計画している訴外A会社の事業は、マネキン派遣を除外した企画宣伝だけでは事業として成り立たないことを主張するのみであり、訴外A会社の業務内容のうちマネキン派遣を除く他の作業の専門性について何ら開陳するところがない。かくては、B係長によって指摘されたとおり、施行規則四条一項四号に照らしてみても、訴外A会社の業務は、労働者供給事業に当るおそれが強かったと認められても止むを得ない事情があったというべきである。
 (四)右の点につき、(証拠略)によると、原告は、行政当局との折衝の最終段階で訴外A会社の事業内容たるマネキンの派遣は、訴外A会社と派遣先企業との間の請負契約に基づく債務履行の一環にすぎないことを強調しつつ、派遣先企業においても、訴外A会社派遣の監督者が、マネキンの業務を監督し、また、訴外A会社が取扱う商品の売上が、計画実施後目標を下廻った場合には、その損失は訴外A会社が負担するとの構想を披れきするに至っている事実を認めることができる。しかしながら、(証拠略)によれば、原告は少なくとも当初は、いわゆる人材リース業を企画していたものであり、行政当局との折衝過程において、法令上の問題点を指摘されるや、漸次その構想を変えてゆき、最終的に、ようやく前認定のとおりの構想に達したものであること、しかも、そこで予定されている請負契約の型態については、派遣先として予定していた企業とは何らの協議を経ないままであったこと、そして、右のごとき構想を示すに至ったものの、結局は訴外A会社については、合法的に運営する自信がないとの理由により、訴外A会社を解散するに至ったものとの事実も推認することができる。