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ID番号 00133
事件名 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件
いわゆる事件名 阪神観光事件
争点
事案概要  キャバレーでバンド演奏する楽団員らの所属する組合が団交を拒否され、又、これに抗議して労働歌を演奏したのに対しバンドマスターあてに請負契約解除の予告がなされたことが不当労働行為と認定され救済命令が出されたのに対しキャバレー側が取消を求めた事例。(一審 認容、控訴棄却)
参照法条 労働基準法9条
労働組合法7条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 労働者の概念
裁判年月日 1982年8月10日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (行コ) 81 
裁判結果 棄却(上告)
出典 労働民例集33巻4号737頁/労経速報1130号6頁/労働判例396号94頁
審級関係 上告審/最高一小/昭62. 2.26/昭和57年(行ツ)158号
評釈論文
判決理由  1 労組法第七条にいう「使用者」とは、不当労働行為の救済を求める労働者との間で使用従属を内容とする直接の契約関係に立つ者をいうと解すべきである。そして、右契約関係の存否は、両者の間の具体的事実関係に即して検討すべきものである。
 控訴人は、労組法第七条にいう「使用者」の概念は、不当労働行為制度の趣旨に照らし合目的的に解釈し、使用者権限を実質的に行使する者を「使用者」と認めるべきである旨主張する。しかし、右にいう「使用者」とは基本的には労働契約の当事者として労働者を雇傭する地位にある者をいうと解すべきであって、所論のように、労働契約という法形式を離れて、当該労働者に対して使用者権限を実質的に行使する者をすべて「使用者」に含ませるとするならば、雇主以外の第三者も当該労働者の労働関係上の諸利益に対し実質的な影響力を及ぼすことを理由に、たやすく「使用者」とされることにもなりかねず、かくては「使用者」の範囲は極めて広範かつあいまいなものとなり、妥当を欠く嫌いがある。所論は採用することができない。
 右認定の事実によれば、被控訴人との関係においては、各楽団が前面に出ており、右楽団を構成する個々の楽団員については、被控訴人は、ほとんど関心を持っていないことが看取される。すなわち、Aバンドの起用に当たり、楽団としての演奏の技量についてはテストを行ったが、個々の楽団員については、テストも面接もなく、その氏名、住所、担当楽器等も確認せず、履歴書、誓約書等を徴することもなく、又テスト時の技術水準が維持されるならば、楽団員の交替も差支えないものとしたこと、楽団員に支障が生じた場合のエキストラ、退団者が出た場合の後任者を探し、選定することは、すべて楽団自身によって行われ、被控訴人が関与することはなく、被控訴人に対しその旨の通知、届出もなされなかったこと、演奏料は、各楽団毎に定められ、被控訴人は、これを一括してB及びAに支払うだけで、その後は、B及びAが、楽団員の演奏能力等を考慮して分配額を決定したうえ分配し、又エキストラに対する支払をしており、被控訴人は、右分配額については何らの関心もなかったこと、被控訴人は、楽団員の出勤・早退・遅刻についての管理を行わず、ただ楽団全体としての出演人数を日報に記載するにとどまったこと等の事実がそれである。
 思うに、Bバンド及びAバンドは、それぞれ楽団として出演し演奏するものであることを考え合わせると、前述のように、テストの際及びその後の出演の際を通じて、楽団の演奏効果が重視され、楽団が前面に出ていて、被控訴人と個々の楽団員との関係が薄くなっていることは、むしろ当然と解されるのであって、かかる事実に、前認定の、被控訴人が、個々の楽団員に対し、直接、間接を問わず労務管理と目すべきものを行っていないことを総合して考えると、B及びAを除く個々の楽団員が、被控訴人と直接労働契約関係に立ち、出演ないし演奏する義務を負っていると認めることは困難である。