全 情 報

ID番号 00138
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 共同印刷事件
争点
事案概要  私立学校法による学校法人たる印刷工芸高等学校に入学し、印刷会社で作業に従事していた者が退学処分をうけ、右印刷会社も就労を拒否したことにつき、右印刷会社と生徒との間には雇用関係が成立していると主張したのに対し、これを否定し地位保全の仮処分申請を却下した事例。
参照法条 民法623条
労働基準法9条
体系項目 労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1953年7月7日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和27年 (ヨ) 4068 
裁判結果 却下
出典 労働民例集4巻4号392頁/時報6号14頁/労経速報133号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由  しかし、前記のように、会社は一般従業員の採用に当つては、試用期間までおき、慎重な手続を経て採用を決定しているに拘らず、入学者の選定は学校が自主的に行い会社は全く関与することなく、入学した者は当然に学校の指示により会社に赴いて作業に従事しており、卒業後も会社で働くかどうかは生徒の自由で、会社は卒業後に始めて正規の手続をとつておること、学校が生徒にこのような作業に従事させているのは働きながら実習をさせ、これによつて印刷技術者養成という学習の目的を達するためであつて作業もこの目的を達するよう編成実施されていること、従つて前記のようにその出勤退社、作業成績などはすべて学校において記録管理せられており、実習として勤労した結果に対して支払われる手当も、会社から直接生徒に支払われるのではなくして、会社は学校の報告に基き生徒各人別に計算して学校に支払い、学校からこれを生徒に支払つていること、及び従来も学校をやめた者は当然実習もやめていること、また申請人の主張するように生徒の入学に際して校長が生徒または会社を代理して、生徒と会社との間に雇用契約を結んだ事実を認めるべき何等の疏明もないことなどを併せて考えると、会社が生徒を雇入れて労働させているのではなく、むしろ学校が主体となつて会社と契約して、いわゆる働かせながら学ばせるために、生徒をその管理のもとに会社で働かせ、その勤労の結果としての手当をうけて生徒に交付するとともに、学校の教科の一部として実習させているものであり、会社は学校の依託によりその施設を供して学校の実習課程に協力し、右実習の内容として生徒を就労させその労働力を得るとともに技術の指導に当つているものと認めるのが相当である。即ち、かような関係は専ら会社と学校との間の契約に基くものであつて、生徒が直接会社に雇用されているからではなく、生徒としての身分を有することによつて、始めて会社でその実習として働くことができる関係にあるものと解さなければならない。前記のような一見会社の従業員と類似する待遇ないし取扱いは、すべて生徒の就労状態に応じた便宜上の措置というべきであつて、雇用関係に由来するものとは認められない。
 以上のように生徒と会社との間に雇用関係が存在しない以上、被申請人会社に対し解雇の効力停止を求める本件申請の理由のないことは明かである。