全 情 報

ID番号 00141
事件名 雇用関係存在確認請求事件
いわゆる事件名 関東通信病院事件
争点
事案概要  日本電信電話公社の附属機関である病院に附置された看護学院に生徒として入学を許可されたことにより、右公社と右入学を許可された者との間に、雇用契約または看護学院の養成課程を終了することもしくは終了後同公社が採用手続をとることを停止条件とする雇用契約が締結されたものとは認められないとした事例。
参照法条 民法623条
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 成立
裁判年月日 1964年12月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ワ) 4135 
裁判結果
出典 労働民例集15巻6号1290頁/訟務月報11巻1号62頁
審級関係
評釈論文 石川吉右衛門・ジュリスト359号133頁
判決理由  証人Aの証言によれば、昭和三六年度(第七回生)までの看護学院の卒業生のうち、原告らを除けば、希望者は全員が被告の医療機関に勤務することができたことが認められるが、証人Bの証言(第一回)によれば、病院と同様に、被告の設置する医療機関であるC病院に附置されている高等看護学院の昭和二九年度の卒業生のうち、数名が被告の医療機関に勤務することを希望しながら、不採用になつた事実があり、必ずしも、被告の医療機関に附置される看護学院の卒業生で、被告の医療機関に勤務することを希望する者は全員が被告に採用されるとは限らないものであることが認められる。のみならず、希望者がその希望どおり被告の医療機関に勤務しているのは、被告が前記のような詮衡を行い、被告の看護婦としての適格性を認めて、これを採用したことによるものであるから、単に、過去における看護学院の卒業生が被告の医療機関に勤務することができたとの外形的事実をもってしては、原告ら主張のような停止条件付雇傭契約の存在を認めることはできない。次に、前掲乙第二、第三号証によると、学院長は、生徒が素行不良で改善の見込がないと認められるとき、学力劣等又は身体虚弱で成業の見込がないとき、正当の理由なく欠席するとき、将来看護婦として不適当と認められるにいたったときなどの場合には、その生徒に対し退学を命じ得るものであることが認められる。しかし、そのことは、看護学院が生徒に看護婦国家試験の受験資格を与えるための養成教育機関として当然のことであって、なんら雇傭関係の存在に関係がなく、原告ら主張のような停止条件付雇傭契約の存在を理由付けるものではない。
 以上、看護学院の目的と被告の附帯業務、養成教育の実体、生徒の待遇、原告らの卒業前後の情況、就職、進学の自由及び生徒の入学許可手続と看護婦採用手続などとして述べたところを総合すると、原告らが看護学院に生徒として入学を許可されたことにより、原告らと被告の間に原告ら主張のような雇傭契約又は原告らが看護学院の養成課程を終了すること若しくは終了後被告が原告らの採用手続をとることを停止条件とする雇傭契約が締結されたものとは、とうてい認めることができない。