ID番号 | : | 00147 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 金剛製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「請負契約の解除」につき、右契約は雇用契約であり、その解除は解雇に当たるとして、従業員としての地位の保全等を求めた仮処分事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章,9条 民法1条3項 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 成立 解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項 |
裁判年月日 | : | 1979年8月10日 |
裁判所名 | : | 浦和地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ヨ) 394 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労経速報1032号9頁/労働判例331号43頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 平田秀光・労働判例336号12頁 |
判決理由 | : | 〔契約労働―成立〕 債権者の就業関係の実体は、債権者が債務者に対し、債務者の労務管理のもとに継続的に労務を提供する関係即ち雇用関係であったものと認められ、債権者に請負代金の名称で支払われた金員も、実質的には右労務の対価即ち給与と認める妨げとなる内容のものでないことが明らかである。 ところで、一定の就業関係が、法律上雇用又は請負の何れに該当するものであるかは、実体を客観的に観察して何れの要件を具備するものと認められるかによって判断すべきであって、契約当事者の付した契約名によって拘束されるものでないことはいうまでもない。ところで本件は、債権者の就業の実体が雇用であるのに、債務者が債権者に対し、雇用としての法律関係において取扱をなすことを拒絶し、請負関係にあるものとして取扱ってきたことになるのであるが、使用者が、就業の実体が雇用であっても、請負契約の形式をとることによりその就業関係を請負の法律関係によって律することが許されるものとすれば、使用者の主観的意図による労働者に対する関係保護法規の適用の排除を容認することになるから、右のような債務者の措置は到底是認し得るものでないというべきである。 〔解雇―解雇手続―同意・協議条項〕 債権者と債務者間において、雇用契約が成立していることは前記認定のとおりであるところ、債務者は、右契約関係を請負と解し、昭和五三年六月三〇日、債権者に対し請負契約を解除する旨の意思表示をしたのであるが、右意思表示は実質的にみれば、これをもって債権者に対する解雇の意思表示と解することができる。 (中 略) 債権者は昭和五三年五月一日、総評全国金属労働組合に加盟を申し込み、同年六月、同組合によって、債権者の加盟が承認されたことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。 (中 略) 債務者は右組合の申し入れに対し、債権者の組合員としての身分を否定し、かつ、右組合の申し入れを無視して、債権者が債務者の提案した嘱託雇用契約の締結に応じないことを理由として、債権者を解雇したこと、嘱託雇用契約の締結は、債権者にとって労働条件の実質的な変更をもたらし、かかる場合には、昭和四八年一一月一日、債務者と右組合間で取り交された確認書(疎甲第二〇号証)に基づき、債務者は組合の申し入れに対し、組合と協議する義務のあること、また、債務者が定めた就業規則(疎甲第二一号証)には第五八条に解雇事由の規定があること、がそれぞれ認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。 (中 略) 以上の事実を総合して判断すれば、債務者の債権者に対する本件解雇は、右確認書所定の手続に違反し、かつ、右就業規則所定の解雇事由に該当しないものであって、何らの正当事由がないから、その余の点について判断するまでもなく、解雇権を濫用した無効なものと認められる。 |