ID番号 | : | 00157 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東箱根開発事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自己都合により退職したとの形式をとって事実上解雇された労働者らが、未払賃金、解雇予告手当等の支払を請求した事例。(請求一部認容、一部棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法17条,5条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 前借金相殺 |
裁判年月日 | : | 1975年7月28日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ワ) 4729 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働民例集26巻4号692頁/時報793号99頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 佐藤進・ジュリスト639号136頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約―前借金相殺〕 かように、もともと貸付金としての実質を有していないにもかかわらず、「前貸金」という制度を建前上採用し、中途退職等の場合に支給額の全額を返還する義務がある旨を社員との間にそれぞれ約定したことは、ひっきょう、使用者である被告において、右義務があることを理由として、社員の生殺与奪の権を一手に掌握して、これにより、被告の社員として勤務している限り終始つきまとう「前貸金」という前借金制度でその労働を事実上強制させるとか、気に入らない社員の解雇を著るしく容易にし、かつ、雇用契約の終了に伴う未払賃金の清算とか解雇予告手当の支払等について、使用者側に一方的に有利な立場を確保する、以上の意図の下になされたものというのほかない。 したがって、そうだとすると、原告らの場合を含めて、中途退職等の場合支給ずみの「前貸金」を返還する旨の約定は、労働者を強制的に足留めさせることを禁じている労基法五条、前借金による相殺を禁止した同法一七条、解雇予告について規定している同法二〇条の脱法行為にあたる面を払拭できず、民法九〇条の公序則に抵触し、無効というべきである。 |