ID番号 | : | 00170 |
事件名 | : | 従業員地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 電電公社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 電電公社の社員公募に応じ、一次試験、二次試験を受け、四月一日から採用するという採用通知を受けたにもかかわらず、反戦青年委員会に属し、無届けデモを指揮して逮捕され、起訴猶予処分となった経歴を有し、公社社員見習いとしての適格性に欠くという理由で採用内定を取り消された労働者が、電電公社に対して、従業員たる地位の確認を求めた事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法623条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 採用内定 / 法的性質 労働契約(民事) / 採用内定 / 取消し |
裁判年月日 | : | 1977年4月21日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ワ) 947 昭和49年 (ワ) 1863 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 時報852号112頁/訟務月報23巻4号690頁 |
審級関係 | : | 上告審/00175/最高二小/昭55. 5.30/昭和54年(オ)580号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 右の事実関係から本件見習社員契約の成否につき判断すると、被告の社員公募は右契約申込みの誘引であり、原告の応募、第一次、第二次試験の受験は右契約の申込みであり(以上の点は双方の認識が一致している)、被告から原告に対する昭和四四年一一月八日付採用通知は右申込みに対する承諾であり、これによって再度の健康診断による異常があったときはこれを解約原因の一つとして被告において解約できるとの条件が付された効力発生の始期を昭和四五年四月一日とする見習社員契約が成立したものと解すべきである。 (中 略) 原告は、右始期到来前においても昭和四五年四月一日には被告公社員としての地位を取得しうるという期待的地位を有するものであるから、被告において全く自由に採用を取消(解約)しうるものではなく、解約するためには合理的な理由の存在を必要とし、本件見習社員契約の趣旨、目的に照らすときは、前記採用通知書に明示された再度の健康診断において異常があった場合に限らず、採用決定後の調査によって、原告を公社見習社員として雇用することが適当でない、換言すれば、原告が公社見習社員として適格性を欠くと認めるべき事由が発見されたような場合においても、即時に解約しうるものと解するのが相当である。そして、右適格性の有無の判断は、被告会社の裁量権にかかるところであるが、原告が既に前記期待的地位を有することからして、採用通知前とは異り、その裁量の範囲は無制限ではなく、原告の右期待的地位を剥奪することを正当とするに足る客観的な事由に基づく合理的な範囲のものでなければならないと解する。原告は、右判断の基準は、解雇の場合と同一であるべきであると主張するが、いまだ見習社員契約の効力が発生していない段階なのであるから、解雇の場合と同一に論じなければならない根拠はなく、解雇の場合に比較すればより自由に認められてしかるべきものと考える。 (中 略) 被告において原告が単に非合法活動を標榜する豊能地区反戦青年委員会に所属している(被告のこの認識が失当といえないことは後記5の(二)のとおり)というだけでなく、同委員会の構成員として昭和四四年一〇月三一日の大阪鉄道管理局前における集会に参加し、その際無届デモを指揮して逮捕され、この件は起訴猶予処分となったとはいえ、右委員会の活動に関して法律違反の具体的な越軌行為がある以上、公社職員として稼働させた場合、前記のような近畿電通局管内の局所における過激な越軌行為を繰り返した反戦系グループに属するとみられる公社職員らに同調し、そのため職場の秩序が乱され業務が阻害される具体的な危険性があると判断したことは首肯でき、かつ、被告公社が公共性、社会性の強い企業体であることを考え合せると、被告が原告は公社見習社員としての適格性に欠けると判断したことは不当とはいえず、客観的な事実に基づく合理的な範囲内のものといえる。少くとも原告には被告公社見習社員としての適格性を欠くと疑うに足りる相当な理由があったと言うべきである。そして、原告についての右のような適格性の欠如は、原告の公社見習社員となるべき期待的地位を剥奪するのを正当とするだけの合理的理由がある場合に当り、被告のなした前記の本件採用取消は正当な事由に基づくものと認めるのが相当であり、これにより本件始期付見習社員契約は適法に解約されたものといわざるをえない。 |