全 情 報

ID番号 00183
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 名古屋汽船事件
争点
事案概要  契約書に雇用期間が三ケ月と明記されていることに基づき解雇通知をされた控訴人が、右期間は試用期間を定めたもので本件解雇は船員法四二条に違反し無効であるとして、賃金支払の仮処分を求めた事例。(一審 申請棄却。二審 控訴一部認容)
参照法条 船員法42条
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
解雇(民事) / 解雇事由 / 船員の解雇
裁判年月日 1965年9月29日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ネ) 302 
裁判結果
出典 労働民例集16巻5号647頁
審級関係 一審/04595/名古屋地/昭37. 6.25/昭和36年(ヨ)1131号
評釈論文 荒木誠之・季刊労働法59号81頁
判決理由  〔労働契約―試用期間―法的性質〕
 以上の各論点についての判断からすれば、被控訴会社と控訴人との間における雇用契約は本員の一時的補充のための臨時雇用ではなく、乗船後三ケ月の試用期間を経過して採用者に従業員としての不適格を認むべき合理的事由がない限りは、本採用とする旨の契約であり、したがって、単に形式的に雇用期間が経過したとの理由(前記乗船後三ケ月という点からすれば昭和三六年五月二三日から三ケ月を経過した同年八月二二日でなければならない)のみをもって、何ら特段の事由を示さずに同年八月一九日被控訴会社が控訴人に対しなした解雇通知は無効であり、たとえ、試用期間中であっても、控訴人は前記合理的事由のない限りは本採用に移行することを確め、かつ、期待して締結したものであるから、被控訴会社の恣意によって、解雇できる筋合のものではないと解すべきである。
 〔解雇―解雇事由―船員の解雇〕
 そして被控訴会社と控訴人との間の雇入契約(乗船契約)は前記のように昭和三六年五月二三日締結されたが、その雇入の期間は定められなかったものであって、これに反する被控訴代理人の主張は採用できず、したがって、その雇止については船員法第四二条の規定の適用があるわけで、被控訴代理人の主張では控訴人乗組のA船船長を通じ電報文(書面)で二四時間以上前に昭和三六年七月一七日限り雇止する旨の申入を控訴人にしているというのであるが右が書面をもってなした旨の証拠はなく、電報文を交付された旨の証拠はないのみならず電報を書面とみることはできないし、原審証人Bは伏木港入港後直ちに書面を提示した旨証言するが、これに見合う確証もなく、被控訴代理人の主張と異る点からしても信用できず、控訴本人は理由も聞かされず、かねて採用当時聞いていたA船に転船のことであろうと思っていたのであるから、右雇止は公認の手続があっても、書面をもってしないから船員法第四二条に違反し、無効のものというべきである。