全 情 報

ID番号 00185
事件名 労働契約関係存在確認請求事件
いわゆる事件名 三菱樹脂事件
争点
事案概要  入社に際し学生運動歴等につき虚偽の申告をしたとして試用期間の満了にあたり本採用を拒否された原告が、本採用拒否は違法であるとして雇用契約上の地位確認と賃金支払を求めた事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法21条
民法1条3項
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
裁判年月日 1967年7月17日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ワ) 5378 
裁判結果 (控訴)
出典 労働民例集18巻4号766頁/時報498号66頁
審級関係 上告審/00044/最高大/昭48.12.12/昭和43年(オ)932号
評釈論文 花見忠・労働経済判例速報644号25頁
判決理由  右の事実によってみても、会社が原告との雇傭につき試用期間を設けたのは、これによって契約の効力発生又は消滅に関し条件又は期限を付したものと解するのは相当でなく、むしろ、他に特別の事情がない限り、右雇傭の効力を契約締結と同時に確定的に発生させ、ただ右期間中は会社において原告が管理職要員として不適格であると認めたときは、それだけの事由で雇傭を解約し得ることとし、諸般の解約権に対する制限を排除する趣旨であったものとみるのを相当とする。
 会社が昭和三八年六月二五日原告に対し口頭で同月二八日の試用期間満了とともに本採用を拒否する旨の意思表示をしたことは当事者間に争がないが、右は前記約旨によれば雇傭解約の申入をなしたものというべきである。
 (二)さらに考察を進めると、さきに説示したように会社は原告に対し、試用期間設定の趣旨に基き原告が管理職要員として不適格であると認める限り、それだけの事由で雇傭を解約し得る地位にあったものであって、解約権に対する諸般の制限を免れていたというべきであるが、その解約権の行使につき一般法理による制限を排除さるべきいわれはない。
 ところで、会社が原告につき管理職不適格の判定をするにいたった経緯には一応、宥恕さるべき点もないわけではないけれども、前記の筋合からすれば、なお調査に疎漏が存したと推認して妨げなく、右判定は結局、主観の域を出なかったものというべきであるから、一方、原告が従属的労働者である事実と対比するときは、会社がなした雇傭の解約申入は、なお、その恣意によるものと認めるのが相当であって、解雇権の濫用にあたるものとして、効力を生じるに由がないものである。