全 情 報

ID番号 00186
事件名 地位保全仮処分事件
いわゆる事件名 東洋酸素市川工場事件
争点
事案概要  試用期間の満了日に本社員には採用せず解雇するとの意思表示を受けた申請人が、右解雇を無効と主張し地位保全の仮処分を申請した事例。(認容)
参照法条 労働基準法21条
民法1条2項,3項
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項
裁判年月日 1967年9月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ヨ) 2258 
裁判結果
出典 タイムズ213号142頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔労働契約―試用期間―法的性質〕
 会社の就業規則四二条には試傭社員は原則として三カ月の試傭期間経過後本社員に採用されるべく、もし本社員に採用されないときは組合の同意を得て解雇すると定められていることは争がなく、(中 略)。
 本件においても当初から試傭社員期間及び本社員期間を通ずる一個の雇傭契約が存し、その当初の三カ月間を試傭期間と名づけ、会社はこの期間内に限り就業規則の定める解雇理由のみならず、将来本社員として労務を提供させることを不相当とする事由があれば、申請人を解雇しうべき権限を留保したものと解するのを相当とする。しからば前示解職の意思表示が無効である限り、申請人は試傭期間の満了とともに本社員としての権利を取得したものである。
 〔解雇―解雇手続―同意・協議条項〕
 (三)同意条項に違反する解雇の意思表示の効力
 就業規則上従業員の解雇につき労働組合の同意を要すると定められている場合これに違反してなされた解雇の意思表示は組合に対する会社の業務違反にとどまらず、そもそも無効である。この理由は次のとおりである。右条項は、労働者の労働条件を具体的直接に規律する基準を定めたものではないから、その理由をもってしては労働契約の中味とはなり得ない。しかし、右条項は、従業員の解雇が公正に行なわれるべく、いやしくも不当労働行為を構成する等違法不当であってはならないための方策として、労働組合に経営内機関としての役割を与え、具体的人事決定に関与させようとするものである。換言すると右条項は使用者に専属する解雇権を制約すべき自主的経営内規範であり、もとよりその効果は個々の従業員に帰すべきものである。従って、これに強行的効力を与え、同意のない解雇の意思表示を無効とするのを相当とする。この際従業員が試傭社員であるため、組合に加入していない場合であっても、組合がかかる者の解雇に関与する目的が前出二(一)2(1)記載のとおりである以上、右結論を左右しない。