全 情 報

ID番号 00202
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 雅叙園観光事件
争点
事案概要  採用後勤務成績が不良であるとして退職を勧告されたがこれに応じないため試用期間を二度にわたり延長された申請人が試用期間の満了前に解雇されたため、地位保全の仮処分を申請した事例。(却下)
参照法条 労働基準法21条4号
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 法的性質
労働契約(民事) / 試用期間 / 試用期間の長さ・延長
裁判年月日 1982年7月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和57年 (ヨ) 2257 
裁判結果 却下
出典 労経速報1130号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約―試用期間―法的性質〕
 まず、本件試用契約の法的性質について検討すると、本件疎明資料によれば、被申請人の就業規則中には試雇用員は「採用が内定し、試傭期間中のもの」として社員と区別されており(一四条)、同規則一一条には「採用内定したものについては原則として三カ月間の試傭期間をおく、試傭期間は選考の為のものであって、この期間に本人の身元、健康状態、技能、勤務成績等を審査し、不適格と認められたとき、又は無届欠勤四日以上に亘る時は解約する」と規定されていることが認められ、以上の事実によれば、被申請人における試用期間は、試雇用員を予定した職務に就かせたうえ社員としての労働能力及び適格性を判定し、不適格な事由があればこれを解雇することができるという機能を営むものであり、本件試用契約は解約権を留保した契約であるというべきである。
 〔労働契約―試用期間―試用期間の長さ・延長〕
 次に、試用期間の長さについては、前記認定のとおり、当初は就業規則の原則どおり三カ月間であったところ、再度にわたり延長されているので、試用期間の延長に合理的な理由があるかどうか考えると、まず、昭和五六年七月の初度目の延長については、前記2認定のとおり、三カ月間の試用期間満了以前に被申請人は申請人を従業員として不適格と認めたけれども、もう少し猶予してほしい旨の申請人の懇請をいれてなお三カ月間様子をみることとしたものであって、その合理性は明らかである。次に、同年一〇月の再度の延長については、前記5認定のとおり、申請人は総務の従業員としてはもはや不適格と判定されていたのであって、被申請人としては、この段階で申請人を解雇することもできたのであるが、本件疎明資料及び審尋の結果によれば、申請人は被申請人の退職勧告に応じないで頑な態度をとり続けたため、申請人を円満退職させることを望んでいた被申請人としては解雇という強力な手段に訴えることをせず、やむなく申請人の可能性を探るべく営業部門への配置替えをしたうえで再度の試用期間の延長をせざるをえなかったことを認めることができ、このような申請人の態度に照らすと被申請人のとった処置もやむをえなかったというべきである。そして、被申請人は客室係での申請人の不適格性が明らかになるや、前記7認定のとおり申請人に対し退職の説得を開始し申請人を円満に退職させるべく努力を重ねていたのであり、以上の事情のもとでは、申請人につき再度試用期間を延長したことも合理的なものとして是認できるものである。