ID番号 | : | 00209 |
事件名 | : | 雇用関係確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 住友セメント事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 原告が結婚したところ、被告会社が結婚退職制度を理由に解雇したので、原告が解雇の無効を主張し雇用契約関係の確認と賃金支払を求めた事例。(認容) |
参照法条 | : | 労働基準法3条,4条 民法90条,1条の2 日本国憲法14条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 結婚・出産退職制 |
裁判年月日 | : | 1966年12月20日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ワ) 10401 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集17巻6号1407頁/時報467号26頁/タイムズ199号112頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 阿久沢亀夫・季刊労働法63号81頁/覚道豊治・ジュリスト373号240頁/宮島尚史・法律のひろば20巻5号24頁/三島宗彦・法律時報39巻4号119頁/瀬元美知男・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕30頁/石松亮二・日本労働法学会誌〔旧労働法〕30号142頁/石川吉右衛門・労働法令通信20巻2号6頁/川口実・ジュリスト365号59頁/本多淳亮・判例評論100号44頁 |
判決理由 | : | 1(性別による差別待遇の禁止)両性の本質的平等を実現すべく、国家と国民との関係のみならず、国民相互の関係においても性別を理由とする合理性なき差別待遇を禁止することは、法の根本原理である。憲法一四条は国家と国民との関係において、民法一条の二は国民相互の関係においてこれを直接明示する。労基法三条は国籍、信条又は社会的身分を理由とする差別を禁止し、同法四条は性別を理由とする賃金の差別を禁止する。ところで、労基法上性別を理由として賃金以外の労働条件の差別を禁止する規定はなく、却って、同法一九条、六一条ないし六八条等は女子の保護のため男子と異なる労働条件を定めている。したがって、労基法は性別を理由とする労働条件の合理的差別を許容する一方、前示の根本原理に鑑み、性別を理由とする合理性を欠く差別を禁止するものと解せられる。以上述べたことから明らかなとおり、この禁止は労働法の公の秩序を構成し、労働条件に関する性別を理由とする合理性を欠く差別待遇を定める労働協約、就業規則、労働契約は、いずれも民法九〇条に違反しその効力を生じないというべきである。 2(結婚の自由の保障)家庭は、国家社会の重要な一単位であり、法秩序の重要な一部である。適時に適当な配偶者を選択し家庭を建設し、正義衡平に従った労働条件のもとに労働しつつ人たるに値する家族生活を維持発展させることは人間の幸福の一つである。かような法秩序の形成並びに幸福追求を妨げる政治的経済的社会的要因のうち合理性を欠くものを除去することも、また法の根本原理であって、憲法一三条、二四条、二五条、二七条はこれを示す。したがって、配偶者の選択に関する自由、結婚の時期に関する自由等結婚の自由は重要な法秩序の形成に関連しかつ基本的人権の一つとして尊重されるべく、これを合理的理由なく制限することは、国民相互の法律関係にあっても、法律上禁止されるものと解すべきである。以上の理由により、この禁止は公の秩序を構成し、これに反する労働協約、就業規則、労働契約はいずれも民法九〇条に違反し効力を生じないというべきである。 |