全 情 報

ID番号 00214
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京機械工業事件
争点
事案概要  男子五五歳、女子三〇歳を停年と定める労働協約の定めに基づき、三〇歳をもって退職したとみなされた女子従業員が、右協約規定は男女間の不当な差別待遇にあたり無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 民法90条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 女子若年定年制
裁判年月日 1969年7月1日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和42年 (ヨ) 2262 
裁判結果 認容
出典 労働民例集20巻4号715頁/時報560号23頁/タイムズ236号254頁
審級関係
評釈論文 下井隆史・昭44重判解説154頁/宮本安美・法学研究〔慶応大学〕42巻12号117頁/古西信夫・立正法学3巻2号155頁/坂本福子ほか・労働法律旬報725号11頁/秋田成就・判例タイムズ239号98頁/新村浩一郎・時の法令696号40頁/竹下英男・月刊労働問題138号124頁/籾井常喜ほか・季刊労働法73号140頁
判決理由 〔労基法の基本原則(民事)-均等待遇-女性若年定年制〕
 本件で問題となっている男女平等の原則について言えば、この原則に対する制約は様々な根拠によってなされるのであって、その具体的内容の検討を度外視して、制約が存在すること自体をもって、一般的に著しく不合理なものということはできない。しかしながら本件停年制の内容は、男子の五五歳に対して、女子は三〇歳と著しく低いものであり、且つ、三〇歳以上の女子であるということから当然に企業貢献度が低くなるとはいえないから、他にこの差別を正当づける特段の事情のない限り、著しく不合理なものとして、公序良俗違反として無効となるものというべきである。しかして、右の正当事由の存否は、当該企業の形態、業務内容、従業員の勤務能力、配置転換の可能性、労働契約の内容等諸般の事情を考慮して決するほかない。
 (中 略)
 (1)男子従業員と女子従業員を職種の決定ないし格付において差別を設ける何らの理由がないことは明白である。
 (中 略)
 (2)右軽雑作業職に就いていることを理由に、女子について男子と差別した停年制を敷くことは極めて信義則に反する行為であるというべきである。
 (中 略)
 (3)他の職種への配置換えを何ら考慮することなく、かかる職種に就いていることを理由に男子と差別した停年制を設けるのは正に信義則に反するものといわなければならない。
 (中 略)
 (4)一般的に既婚の女子労働者の勤務成績が悪いということを認めるに足りる疎明はなく(中 略)。
 以上のとおり、女子従業員三〇歳停年制に関する被申請人の主張はいずれも理由がなく、他に本件停年制を正当づけるに足りる特段の事情の疎明もないので、女子従業員三〇歳、男子従業員五五歳と女子を著しく不利益に差別する本件停年制は、著しく不合理なもので、公序良俗に反して無効である。