ID番号 | : | 00220 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 伊豆シャボテン公園事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 就業規則を変更して設けられた男子五七歳女子四七歳定年制の経過措置としての右定年規定の実施猶予期間が経過した後、定年に達したものとして扱われた女子従業員らが、雇用契約上の地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請認容) |
参照法条 | : | 日本国憲法14条 労働基準法3条 民法90条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 男女別定年制 |
裁判年月日 | : | 1973年12月11日 |
裁判所名 | : | 静岡地沼津支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ヨ) 59 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 時報756号111頁 |
審級関係 | : | 控訴審/00222/東京高/昭50. 2.26/昭和48年(ネ)2679号 |
評釈論文 | : | 高木紘一・労働法律旬報854号54頁 |
判決理由 | : | 当裁判所も企業が女子従業員の定年年令を男子従業員より低く定めることを内容とする定年制を就業規則において定めることは労働条件について男女を差別するものであって、憲法第一四条第一項が法の下における性別による差別取扱いを禁じ、憲法第一四条をうけた労働基準法第三条が労働条件に関する均等待遇を規定した趣旨及び同法第四条が性別を理由とする賃金の差別を禁止した趣旨に鑑み、(なお労働基準法が賃金以外の労働条件について直接性別を理由とする差別を禁ずる旨の規定をおいていないのは、過去において女子労働者が一般に男子労働者より劣悪な条件下におかれ差別を受けて来たが、その最大なものが賃金差別であったという歴史的な事情をうけて、特に性別による賃金差別の禁止をうたったこと、労働基準法第三条は憲法第一四条の規定を受けて労働条件に関し法の下の平等を規定したものであるが、性別による差別取扱いの禁止を掲げなかったのは、女子労働者については母性保護の立場や男子との肉体的条件の違いから同法第一九条、第六一条ないし六八条等で特別の保護規定をおき、男子労働者と機械的に同一労働条件下におくことから生ずる不合理をさけようとする配慮からきたものであると解すべきこと、したがって右配慮から生ずる労働条件の差別以外に性別による差別を許容したものではないと云うべきである。)合理的理由のない限り労働条件に関する性別による差別は許されないとすることが、公の秩序として確立しており、これに反する就業規則は民法第九〇条により無効であると解するので、右の観点から本件定年制が男女の年令に差別をつけたことに合理的理由があるか否かについて審理を進める。 (中 略) 以上のように被申請人が主張する理由は何れも本件定年制を合理的ならしめるものとは認め難く、且つ前示認定によれば被申請人の営業内容、その各職種における業務内容は、例えば動物職、作業員職における限られた肉体労働や危険を伴う作業部門を除いては、たとえ男女の肉体的条件において女子が筋力を主とした体力において男子より劣るとしても、女子であることの故に高令化(本件においては男子従業員の定年年令である五七才を基準とする。)に伴う老化のため体力的な面でその業務に支障が生ずるものと考えられないこと、被申請人自ら中高年女子、時には五〇才を超える女子を新たに正社員として雇傭し、従来ウエイトレス、販売員、調理補助者、清掃員などの業務に就業せしめて来ており、そのため具体的な支障が生じなかったこと、さらに女子従業員、ことに四〇才、四七才の女子従業員と二〇才代の女子従業員や同年代の男子従業員との平均賃金の差や、後記認定の申請人等の賃金額から考え、女子従業員のみがその労働内容に比べて高賃金を得ており、そのため被申請人において若年女子従業員の新規採用が不能となり、経営合理化阻害の要因であると主張する人件費の昂騰化を招いたものとは到底考えられないこと、(中 略)。 などを考え合わせると、被申請人会社の就業規則において新たに本件定年制を定めた部分の規則条項は、何等これを合理的ならしめる理由なく男女の性別による差別を為し女子に不利益な労働条件を課したものであって、公の秩序に反するものとして民法第九〇条により無効であると云わなければならない。 |