ID番号 | : | 00224 |
事件名 | : | 雇用関係存続確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 男鹿市農協事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 女子四六歳、男子五六歳の差別定年制に基づき退職させられた女子と農協との間の雇用関係の存続の確認が求められた事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 日本国憲法14条 労働基準法3条 民法90条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 男女別定年制 |
裁判年月日 | : | 1977年9月29日 |
裁判所名 | : | 秋田地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ワ) 147 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例287号47頁/労経速報968号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | そして、以上のことと憲法第一四条第一項の趣旨に照らせば、労働条件について性別のみを理由として合理的理由もなく男女を差別してはならないことは、公の秩序を構成するものと解すべきである。したがって、労働条件について合理的理由を欠く男女の差別的取扱いを定める就業規則の規定は、民法第九〇条に違反し無効であるというべきである。 (三)1 ところで、一般に定年制は、高年令で労働能力の低下した職員を若年の職員に代えることによって作業能率の維持、向上をはかるとともに、人事の停滞を防ぎ、あるいは人件費の上昇を押える等種々の目的、理由から設けられる。したがって、被告の就業規則第一六条については、右のような定年制の目的、理由からみて合理性があるかどうかを検討しなければならない。 (中 略) (1)肉体的生理的差異について 被告の業務のうち、農産物や畜産物の集出荷等の業務には体力を必要とする肉体労働をともなう作業が多いが、これには男子職員が従事しており、女子職員は一般的な事務等の体力を必要とするような肉体労働をともなわない作業や軽作業に従事していた。そして、原告が従事していた家庭生活指導の業務も肉体労働をともなうようなものではなかったし、原告がこの業務を行なうについて体力的な面で特に支障を生じたというような事情もなかったのである。 そうだとすれば、男女の肉体的生理的差異は、これによって女子職員がその担当業務を行なうについて体力的な面で特に支障が生ずるというものではないから、これを問題にする基盤に欠け、男子職員と女子職員との定年年令に一〇才の差を設けることを合理的ならしめる理由とはなり得ない。 (2)職種等の制約について 被告の女子職員も従事している貯金や各種共済保険の勧誘業務には夜間勤務をともなうことが少なからずあるし、家庭生活指導の業務にも夜間勤務をともなうことがわずかながらある。しかし、仮にこのことによって被告主張のとおり女子の職域が制約されるとしても、それは男子に対する女子一般の問題であって、年令に関係ないことであり、四六才に達した女子に固有の年令的制約にかかわる問題ではない。したがって、これも男女差別定年制を合理的ならしめる理由とはなり得ない。 また、女子は男子に比して管理能力や専門的業務を修得する能力が低く、他の職種への配置転換が困難であるとの被告主張の事実については、これを認めるに足りる何らの証拠もない。 (3)賃金と労働能力との不均衡について 女子は、四〇才代後半になると一般的に男子より労働能力が低下するとか、男子に比べて企業貢献度が低いとの主張については、何ら証拠もなく、その合理的根拠を見出し得ない。したがって、再々抗弁第三項の被告の主張は採用できない。 (4)就職の門戸の開放について 昭和四四年四月当時から昭和五一年八月当時までの間における被告の女子職員数の全職員数に対する割合が被告主張のとおりであることは、当事者間に争いない。しかし、再々抗弁第四項の被告の主張は、女子職員がその業務を行なうについての年令的制約とは本来無関係なものであるから、既に雇用されなお雇用継続を望む女子職員との雇用契約を男子職員とのそれより早く終了させようとする男女差別定年制の合理的根拠にはそもそもなり得ないものである。 (中 略) 企業が就業規則において男女差別定年制の規定を設けている場合には、その差別の合理性の立証責任は、右規定が有効であることを主張する側にあるものと解すべきところ、以上のとおり、被告の就業規則第一六条が男子職員と女子職員との定年年令に一〇才の差を設けていることにつき、その合理的理由を見出すことはできない。したがって、同条のうち女子職員の定年年令を定めた部分は、合理的理由もなしに女子職員を不利益に差別するものとして、民法第九〇条に違反し無効といわざるを得ない。 |