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ID番号 00225
事件名 雇用関係存続確認等請求控訴同附帯控訴事件
いわゆる事件名 日産自動車事件
争点
事案概要  就業規則の定年制に関する、男子従業員の定年年齢を五五歳とし、女子従業員の定年年齢を五〇歳とする旨の規定に基づいて退職させられた女子従業員が、男子の定年年齢との格差を公序良俗に反し違法であるとして雇用関係存続確認等を請求した事件の控訴審。(会社側敗訴)
参照法条 労働基準法3条,2章
民法90条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 男女別定年制
裁判年月日 1979年3月12日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 675 
昭和48年 (ネ) 702 
昭和48年 (ネ) 1886 
裁判結果 (上告)
出典 労働民例集30巻2号283頁/時報918号24頁/東高民時報30巻3号53頁/タイムズ378号68頁/労経速報1008号3頁/労働判例315号18頁
審級関係 上告審/00227/最高三小/昭56. 3.24/昭和54年(オ)750号
評釈論文 PQR・時の法令1036号48頁/奥山明良・ジュリスト717号138頁/赤松良子・時の法令1033号4頁/浅倉むつ子・季刊労働法112号128頁/大脇雅子・ジュリスト695号77頁/樋口幸子・労働判例322号4頁
判決理由  定年制は、労働者に職業生活の中断を強いるものであって、労働条件のうちでも解雇と同様に重大なものであるが、それが通用力を持つのはその内容に平等性があることによるものであって、理由のない差別はかえって定年制自体の通用力を減殺する結果を招くのみならず、定年制の内容に適正を欠くと、定年時以前から従業員の職業生活に対する希望と活力を失わせるという弊害を生ずるのであって、このような定年制の特質にかんがみると、定年制の内容に差別が設けられる場合は、それが社会的見地においても妥当であって、その適用を受ける者の納得が得られるものであることが、強く要請されるものということができる。
 ところで定年制は企業の雇用政策の重要な一環を形成するものであって、一般的には企業の合理的な裁量による判断を尊重すべきものであるが、すでに検討したとおり男女の平等が基本的な社会秩序をなし、定年制それ自体の性質が右にみたとおりであることを考慮すると、定年における男女差別については、その合理性の検討が強く求められるのはやむを得ないものといわねばならない。
 以上検討したところから考えると、定年制における男女差別は、企業経営上の観点から合理性が認められない場合、あるいは合理性がないとはいえないが社会的見地において到底許容しうるものでないときは、公序良俗に反し無効であると解するのが相当である。