全 情 報

ID番号 00226
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 福岡水産荷役事件
争点
事案概要  使用者がなした懲戒解雇につき、懲戒事由が定年を男子六〇歳、女子四五歳と定めた定年制施行細則、労使協定の適用を避けるための口実であり、懲戒事由の事実はないとして、地位保全を求めた仮処分事例。(申請認容)
参照法条 日本国憲法14条,24条
民法90条
労働基準法3条,4条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 男女別定年制
裁判年月日 1981年1月12日
裁判所名 福岡地
裁判形式 決定
事件番号 昭和55年 (ヨ) 903 
裁判結果 認容
出典 労働判例358号51頁/労経速報1082号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由  債務者会社は、前記二3のとおりその就業規則に基づく定年制施行細則、労使協定書により、事務系女子の定年年齢を満四五歳として、男子の場合よりも一五歳低く定めている。ところで、憲法一四条が国又は公共団体と私人との関係において保障する男女平等の原則は、同法二四条と相まって社会構成員である私人相互間にも一般的に実現されることが期待されているものというべく、合理的理由のない男女間の差別の禁止は、公の秩序の内容を構成していると解される。従って、定年年齢等労働条件についての男女間の差別が、専ら女子であることのみを理由とし、それ以外の合理的理由が認められないときは、このような不合理な性別による差別を規定した定めは、公序良俗に反するものとして民法九〇条により無効というべきである。
 本件において、事務系女子の定年年齢を前記のとおり男子より低く定めたことにつき、その合理的理由を本件全疎明資料から窺い知ることはできず、右の定めは専ら女子であることのみを理由とするものと考えざるをえないから、いわゆる男女間差別定年制を定めた前記定年制施行細則及び労使協定書の当該条項は民法九〇条に反し無効というべきである。